第1章 「太王四神記」とは|NHKを唸らせた「太王四神記」

2009年12月01日00時00分ドラマ
2010年1月にNHKオンデマンドで「太王四神記」全話配信を記念した特集記事。※配信終了※

2007年韓国MBSで放送され、日本でも大ヒットした韓国時代劇ドラマ「太王四神記」と主演のペ・ヨンジュンの魅力を探る。

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テサギ「太王四神記」は、数千年の時を越えてからみ合う運命と、切ない愛に自らの命を賭けた優しく勇敢な王の生涯を描いた歴史ファンタージー。主人公は韓国の歴史的英雄にして高句麗の第19代王・広開土大王、タムドク。もちろん演じたのはペ・ヨンジュンだ。監督は巨匠キム・ジョンハク、音楽は久石譲、エンディング曲を歌うのは東方神起。共演者はムン・ソリ、イ・ジア、ユン・テヨン、チェ・ミンス、パク・サンウォン、オ・グァンロクら。制作陣を想像しただけでヨダレが出そうな大作は、韓国MBCの2007年の作品。韓国では36%超の最高視聴率を記録し、“テサギ”の愛称で愛された。

作品の背景となったのは、今から4000年以上も昔の神話の時代から、西暦400年ころの高句麗の時代まで。歴史年表で確認しておこう。
朝鮮半島に古くから伝わる「檀君神話」がベースになっている。檀君(タングン)は紀元前2333年に建国された檀君朝鮮の始祖で、韓国では、朝鮮半島の歴史は檀君朝鮮にはじまったと信じられており、箕子朝鮮・衛氏朝鮮の3国家が存在したといわれている。この時代を後の李氏朝鮮時代と区別するため古朝鮮と呼んでいるが、実際に歴史的な実証があるのは衛氏朝鮮だけで、他は神話の世界。

檀君神話と太王四神記
韓国では誰もが知っている「檀君神話」は、13世紀末に高麗の高僧一然が書いた「三国遺事」に記されている。以下、(○○○)は、ドラマでの描かれ方や補足。

テサギ昔々、気の遠くなるような昔、万物の神で空の支配者桓仁(ファンイン)は、自分の息子の桓雄(ファヌン)(白髪のペ・ヨンジュン)が地上に降りたがると、その願いを聞いてやり、「住みやすい人間世界になるように助けてあげなさい(弘益人間)」という建国理念で地上を治めるよう命じた。そのとき、桓雄を手伝う風伯、雨師、雲師ら3000人を一緒に地上へ送りこんだ。(ドラマでは青龍・白虎・玄武・朱雀の四神として登場) 桓雄が降臨したのは中国満州の国境に位する聖山・太伯山、現在の白頭山。ちなみに、この山は、中国満州民族にとっても聖山とされており、長白山とも呼ばれている。現代の朝鮮半島の地図で確認しよう。中国との境界線、両江道の国境地帯にある標高2,744mの火山だ。(江原道と慶尚北道の境にある、霊山、太白山とは別なのでお間違いなく)

地上に降りた桓雄は二人の女性、いや、このときはまだ2頭の獣と出会う。1頭は虎で、もう1頭は熊。人間になりたいという2頭に、桓雄は100日間日光を浴びずに、20かけらのニンニクと1本のよもぎだけを食べて過ごすように命じた。しかし、虎は耐えられずに穴を出てしまい、熊だけがこれに耐え、見事37日目に人間の女性に生まれ変わった。(ドラマでは、好戦的な虎族リーダー=カジン、心優しい熊族女戦士=セオとして登場)



感謝した熊女は、お願いついでに「仲間がいなくて寂しいので神檀樹(シンダンス)の下で子供を生ませてほしい」と頼みこむ。(なんともずうずうしいお願いだが、ドラマでは、二人で迎えた朝日に向かって、桓雄の熱いプロポーズで結ばれる)彼女の頑張りとその強い思いに感動したファヌンは、彼女を花嫁に迎え入れ、やがて子供が生まれる。この子が檀君だ。この“檀君”という名前は、祭壇を支配、つまり地上の統治者という意味を込めてつけられた。
両親の願いどおり檀君は賢く強い指導者に育ち、B.C.2333年、今の北朝鮮の首都へ移って、檀君朝鮮王朝を建国した。これがチュシン=平和の国だ。このチュシンという名前が、チョウセン(朝鮮)の語源とも言われている。(ドラマでは、嫉妬に狂ったカジンのためセオが死に、桓雄は天に帰る。このとき、桓雄は神檀樹の下に檀君と四神を残していく)

※お断り※
現代中国の4分の1を支配していたともいわれている古朝鮮について、中国側では、中国が建国した国としている。つまり、檀君も中国の一領主に過ぎないとみており、古代朝鮮を巡る韓国と中国の歴史認識は大きく違っている。今回の特集は、ドラマ「太王四神記」に描かれた内容に沿って進めていることをご理解のうえ、お楽しみいただきたい。

三国時代の中の高句麗
三国時代の地図【三国時代の地図】拡大クリックで拡大檀君が建国した檀君朝鮮王朝から始まった強大な大国であった古朝鮮は、紀元前108年中国の漢の鉄器によって滅ぼされた。その後、高句麗、百済ともうひとつの強国、新羅の3国が各地の小国を統合し、三国時代がはじまる。この時代は、700年も続き古代日本にも大きな影響を与えたという。当時の3国の勢力を横の地図を押して確認しよう。地図でもっとも広大な領土を持っていたのが高句麗だ。
高句麗の紀元は、各地で興った小国のひとつ扶余国。この国の第三王子チュモンが紀元前37年に高句麗を建国し、共に尽力したソソノ(召西奴)が初の国母となった。(ご存知ドラマ「朱蒙」だ。詳しくは、【韓ドラここが知りたい】【歴史・豆知識】を参照) 
668年、新羅と唐の連合軍に倒されるまで熾烈な領土戦争が繰り返されるが、特に新羅との境界は、地図でみるグラデーションの部分が時代によって大きく移動する。ドラマ中盤以降、タムドク王が活躍した時代は、高句麗の領土をぐんと拡げた時代で、韓国では広開土王と呼ばれている。日本や中国では好太王と呼ばれた。

この高句麗、新羅、百済の3国を描いたドラマがいくつかあるので紹介しよう。ドラマで見る年表、【神話~三国時代】を見てみよう。「太王四神記」は、日本で人気の歴史ドラマの中で最も古い時代を描いており、「朱蒙」「風の国」などを経て、なんと2000年以上もの歴史を24話で紹介しているのだ。当時の史料はほとんど残されておらず、ドラマも史料の残っている三国時代後期に集中している。人気の「薯童謠」「善徳女王」などを楽しむ上でも、この「太王四神記」はぜひ見ておきたい作品だ。

そんな「太王四神記」をもっと深く知るには…やっぱり…もちろん!今回もNHKに突撃取材だ!
ということで、特集「NHKと冬のソナタ」で取材に応じてくださった小川純子さんにお願いした。

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【作品紹介】【「太王四神記」を2倍楽しむ】