第5章 選ばれし者の条件とは|NHKをうならせた「太王四神記」

2009年12月01日00時00分ドラマ
2010年1月にNHKオンデマンドで「太王四神記」全話配信を記念した特集記事。※配信終了※

2007年韓国MBSで放送され、日本でも大ヒットした韓国時代劇ドラマ「太王四神記」と主演のペ・ヨンジュンの魅力を探る。

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テサギチュシンの王に選ばれたタムドクの魅力は、リーダーとしての強いカリスマと、広い視野にたった先見の明、そして何より人心を掌握する気品ある優しさの3つだ。(と筆者は感じた)そして、どうやらこの3つは、俳優ペ・ヨンジュン本人にも備わっているようだ。

寡作のカリスマ俳優
ペ・ヨンジュンは出演作品が少ない寡作の俳優として有名だ。韓国のトップ俳優たちのほとんどは素晴らしいポリシーを持って作品選びをしているが、ペ・ヨンジュンのそれは半端でない。デビュー15年で彼が主演した作品を見てみよう。
[ドラマ]
・ 1994 KBS 「愛の挨拶」
・ 1995 PSB 「海風」
・ 1995 KBS 「若者の日向」
・ 1995 KBS 「別れる6つの段階」
・ 1996 KBS 「パパ」
・ 1996 KBS 「初恋」(主演はチェ・スジョン)
・ 1998 KBS 「裸足の青春」       
・ 1999 MBC 「愛の群像」
・ 2001 MBC 「ホテリアー」
・ 2002 KBS 「冬のソナタ」
・ 2007 MBC 「太王四神記」
[映画]
・ 2003 「スキャンダル」
・ 2005 「四月の雪」
ドラマ11本、映画2本。わずか13本の作品しかないのだ。演じた役柄は、若気の至りで突っ走る悪たれ、気弱なボンボン、バツイチの子持ち、非情なビジネスマン、記憶喪失の青年実業家…。常に新しい作風、まったく異なるキャラクターを見事に演じ分け、それでいてしっかりペ・ヨンジュンを主張している。そんな役者ペ・ヨンジュンに、ファンたちは強いカリスマ性を感じているのかもしれない。



先見の明があるチャレンジャー
テサギでは、国を超えて日本の巨匠、久石譲を音楽監督に迎えたり、新しい型の史劇俳優としての魅力を見せてくれたり、斬新的なプロモーションを仕掛けたりしたが、ペ・ヨンジュンはテサギ以外にも、様々な分野で先見の明を発揮していた。
まずは、料理の世界。2006年、東京都港区白金に高級韓国料理店「高矢禮(ゴシレ)」を開店している。これまでの美味しくて気さくな韓国料理=焼肉店のイメージを一新し、高級伝統料理で韓国文化を広めた。
次に、アニメの世界-韓ドラを日本でアニメ化しその声を冬ソナの主役二人が韓国語で吹き替えしている。これは、ペ・ヨンジュンがいたからこその企画といってもいいだろう。
まだある。「ペ・ヨンジュンと学ぶ韓国語DS」-ゲーム感覚で覚えられる韓国語の学習ソフトだ。
カメラ&出版の世界-写真本「韓国の美をたどる旅」通称ハナヨだ。
韓国を世界中に広める観光大使としての活躍、UN気候協約の国際環境を訴えるナレーション…など、常にアンテナを張り巡らせ、時代の一歩先を見据えている。

ファンを家族と呼ぶ優しさ
多くの韓国の俳優がファンのことを家族と呼んでいるが、この呼び方をもっとも早く、そして一般に広めたのはペ・ヨンジュンだろう。なだれ込むファンを静止するため手荒な態度に出た警備員を強くたしなめたり、ルール違反のファンにまで、優しく手を振るペ・ヨンジュンは、単なるファンサービスを超えている。この優しさは何もファンだけに対するものではない。筆者が映画「四月の雪」でペ・ヨンジュンに単独インタビューをしたときの優しい思いやりについては「NHKと冬のソナタ」の第4章で述べたとおりだ。冬ソナの超多忙な時期にも、友人の結婚式で受付や雑用を引き受けたり、共演した俳優たちのためにヘリコプターで結婚式に駆けつけたりと、その優しさの逸話は枚挙に暇がない。
もちろん、彼はただ優しいばかりの男ではない。仕事の面では決して妥協を許さず、同じ失敗をした仕事仲間には厳しく指摘もする、気品のある優しさなのだ。

微笑みの貴公子からチュシンの王へ
テサギデビュー以来彼が演じたのは、「恋と友情、生きることに悩んだヨンミン、頭脳明晰で家族を支えるチャヌ、病魔と闘うジェホ、冷徹なM&Aドンヒョク、寡黙なチュンサン、優しいミニョン…」。そのどれもが彼のはまり役だった。しかし、俳優としてだけではなく、韓流と韓国文化をアジア中に広め、文化勲章も手にしたほどの人物となった今の彼には、選ばれしチュシンの王、タムドクが一番のはまり役。彼の熱烈なファンの方には恐縮だが、ペ・ヨンジュンよりルックスのいい俳優は、韓国にたくさんいるし、彼より演技のうまいカリスマ俳優を挙げろといわれればいくらだって名前が出てくる。しかし、選ばれし者になるための3つの条件「カリスマ、先見の明、気品ある優しさ」のすべてを兼ね備えた俳優を挙げろといわれると、やはり彼の顔が一番に浮かぶ。
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【作品紹介】【「太王四神記」を2倍楽しむ】