2023年カンヌ国際映画祭で上映された唯一のロシア映画『グレース』予告動画解禁

08月22日13時00分映画

“ロシア映画”を締め出す世界的な動きが強まる中、息が詰まるような停滞感に覆われたロシア辺境を舞台にキャンピングカーで旅をしながら移動映画館で日銭を稼ぐ父と、思春期の不安を抱える娘の成長譚を描き2023年のカンヌ国際映画祭の監督週間に見事に選出されたロードムービー『グレース』10月19日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開となる。予告動画が解禁となった。



2023年のカンヌ国際映画祭で上映された唯一のロシア映画として大きな反響を呼んだ『グレース』。今回解禁された予告編映像では、ロシア南西部の辺境、乾いた風が吹きつけるコーカサスの険しい山道、息が詰まるような停滞感に覆われたロシア辺境を、ヴィム・ヴェンダースの初期作品やアンドレイ・タルコフスキーを彷彿とされると評された映像美で映し出している。

母の不在のなか、寡黙な父と錆びた赤いキャンピングカーで二人だけの日銭稼ぎを続ける日々。そんな中、思春期の不安を抱える少女の、ここではない何処かへという心の機微、様々な出逢い、思春期の不安を抱える少女の姿を切り取っている。父親への反発、思春期の戸惑い、そして終わりの見えない旅路。彼女が漂流する先には一体何が待ち受けているのだろうか。

グレース本作が撮影されたのはロシアによるウクライナへの軍事侵攻が本格化する少し前の2021年秋である。意図的には描かれないものの、徐々に不穏と暴力がその映像の粒子に侵食していくようなこの映画から、現在も続く戦争の影を感じる事は避けられないだろう。既に何かを諦めてしまったような表情を浮かべる娘は、この国の行く末、そのただならぬ気配を感じていたのだろか。母親も友人もいない。自分を守る家も法もない。生ぬるい共感や哀れみに一切なびくことなく、彼女はただやり場のない感情を沸々と溜め込んでいく。この果ての無い放浪の先に彼女を救うものはあるのだろうか。剥き出しのロシアの大地を舞台にした小さくも揺るぎない抵抗の軌跡は、私たちにあっけないほど美しい余韻を残すだろう。

■作品概要
監督・脚本:イリヤ・ポヴォロツキー
撮影:ニコライ・ゼルドビッチ 音楽:ザーカス・テプラ
出演:マリア・ルキャノヴァ、ジェラ・チタヴァ、エルダル・サフィカノフ、クセニャ・クテポワ
原題:Блажь|Blazh 日本語字幕:後藤美奈
配給:TWENTY FIRST CITY 配給協力:クレプスキュール フィルム

[2023年/ロシア/ロシア語、ジョージア語、バルカル語/119分/カラー/ヨーロピアンビスタ]

映画『グレース』本予告映像 YouTube