【韓ドラコラム】「朝鮮弁護士」から「オク氏夫人伝」へ…女性外知部が切り拓く新たな時代劇

2023年に話題となった「朝鮮弁護士カン・ハンス 誓いの法典」では、ウ・ドファン演じるカン・ハンスが“外知部(ウェジブ)”として民を救う姿が描かれている。
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朝鮮時代に実在したこの職業は、法律知識のない庶民や弱者のために訴訟を引き受ける、現代の弁護士に近い存在だ。当時の朝鮮社会は儒教思想に基づく厳格な身分制度が敷かれていたが、女性や奴婢でも訴訟を起こすことができた世界的にも珍しい社会であった。
外知部とは
外知部は高麗時代の「都官知部」に起源を持ち、朝鮮王朝時代には「掌隷院」などの官庁に引き継がれた。やがて官職に就かず民間で活動する代訟人が「外知部」と呼ばれるようになり、社会的弱者のために法の力で救済を図った。その活動は時に政権から危険視され、1478年には外知部が咸鏡道に追放されるなどの弾圧も受けたが、19世紀の甲午改革まで民衆の間で必要とされ続けた。
※もっと詳しく知りたい方は【“外知部”は実在した職業?】へ。
新時代の傑作「オク氏夫人伝」…女性外知部の物語
2024年から2025年にかけて大ヒットした「オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-」は、女性外知部を主人公に据えた初の本格時代劇である。主人公クドク(イム・ジヨン)は、奴婢として虐げられながらも読書や刺繍の才能を磨き、両班の令嬢オク・テヨンと運命的に出会う。テヨンの「外知部になりたい」という夢を聞いたクドクは、ある事件をきっかけにテヨンの名を継ぎ、オク・テヨンとして生きる決意をする。
法と正義をめぐるフィクションと史実の融合
クドクは身分を偽りながらも、外知部として次々に訴訟に挑む。冤罪で捕らわれた使用人の弁護や、奴婢虐待を禁じる歴史的法令を援用した主張、さらには著作権問題に巻き込まれた芸人を救うなど、現代にも通じるテーマが随所に盛り込まれている。
これらはフィクションとして描かれているが、当時の訴訟制度や法令をベースにした構成で、史実の重みと創作の面白さが絶妙に絡み合っている。
劇中、クドクが放つ「外知部は官職じゃないわ。文字さえ読めれば誰にでもできる」という言葉には、法の下の平等というドラマの根幹が込められている。
女性の視点がもたらす時代劇の革新
「オクニョ 運命の女」や「トンイ」でも主人公が“外知部”を名乗るシーンがあるが、職業としては「朝鮮弁護士カン・ハンス 誓いの法典」や「御史とジョイ~朝鮮捜査ショー~」など男性外知部が主人公だった。一方、「オク氏夫人伝」は、女性の視点と社会的葛藤を加えたことで、法の下の平等や社会的正義の本質を現代に問いかけている。
まとめ
「朝鮮弁護士」では男性外知部が主人公だったが、「オク氏夫人伝」では女性外知部クドクの波乱万丈の人生が描かれている。
外知部は身分や性別を問わず、庶民や弱者のために法の力で戦った存在である。
「オク氏夫人伝」は、女性外知部の視点から時代劇と法廷ドラマの新たなジャンルを切り拓いた。
歴史とフィクションが交錯する「オク氏夫人伝」は、時代劇ファンだけでなく、現代社会にも響くメッセージを持つ作品である。
「オク氏夫人伝」はU-NEXTで全話を独占見放題配信中で、昨日4月30日に「スペシャルエピソード」が配信開始した。また、「朝鮮弁護士カン・ハンス」もU-NEXTで配信中だが、こちらは5月現在「ポイント作品」となっている。また、「朝鮮弁護士」は5月11日からNHKBSP4K、15日からNHKBSで放送される。男女の外知部を見比べてみるのも一興だ。
どちらも以下の【2倍楽しむ】で全話あらすじ(ネタバレあり/なし)と見どころ、時代背景、キャスト紹介などまとめている。
【「朝鮮弁護士」を2倍楽しむ】
【「オク氏夫人伝」を2倍楽しむ】
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