【レビュー】夏休み最後の夜に観たい!シン・ヘソン主演『ターゲット-出品者は殺人鬼-』日常が地獄に変わる101分|韓国映画
STUDIO PIEONA ALL RIGHTS RESERVED.
夏休み最後の夜、家で過ごす時間に、一本のスリラー映画はいかがだろうか。
シン・ヘソン主演の韓国映画『ターゲット-出品者は殺人鬼-』(原題:타겟)は、フリマアプリでの中古品取引という、誰にとっても身近な日常を題材にしたリアルスリラーだ。
『ターゲット-出品者は殺人鬼-』は、2023年に韓国で製作され、日本では2024年6月に劇場公開された作品だが、今もU-NEXT、Hulu、DMM TVなどで見放題配信されており、自宅で楽しめる。たった一度のネット取引をきっかけに、平凡な会社員の日常が崩壊していく恐怖は、むしろ「今」だからこそリアルに感じられる。
「自分ならどうするだろう?」――そんな不安をかき立てる、101分間ノンストップの恐怖。便利なスマホやフリマアプリが身近な存在だからこそ、この映画は観終わった後も背筋を冷たくさせる。
今回は、夏休み最後の夜にこそおすすめしたい『ターゲット-出品者は殺人鬼-』の魅力を、ネタバレなしで紹介する。
ネタバレなしあらすじ:たった一度の取引が、すべての日常を破壊する
インテリア会社でチーム長として働く平凡な会社員スヒョン(シン・ヘソン)は、新居への引っ越しを機にフリマアプリで中古の洗濯機を購入する。
ところが、届いた洗濯機は故障品だった。
詐欺に遭ったと知ったスヒョンは、出品者のアカウントを追跡し、商品ページに「この出品者は詐欺師です」と警告コメントを書き込む。
しかし、その出品者の正体は、購入者を標的にしてきた冷酷な殺人鬼だった。
自分に反撃されたことに激怒した男は、スヒョンの電話番号や住所を特定。身に覚えのない大量のデリバリーが届き、見知らぬ男たちが自宅を訪れ、さらには職場や人間関係までが「なりすまし」によって侵食されていく。
警察のチュ刑事(キム・ソンギュン)とナ刑事(カン・テオ)に相談するスヒョンだったが、ネット上で起きる不可解な嫌がらせの数々は、簡単には解決できない。
こうして、ほんの一度の取引をきっかけに、スヒョンの日常は少しずつ、しかし確実に地獄へと変わっていく。
誰の身にも起こりうる「フリマアプリ」という恐怖
本作の最大の魅力は、「これは自分の身にも起こり得るかもしれない」と思わせる圧倒的なリアリティだ。フリマアプリで中古品を購入する。届いた商品が壊れていた。詐欺だと知って怒りを覚え、相手に警告する――。
ここまでのスヒョンの行動は、決して特別なものではない。
だからこそ、そこからすべてが崩れ始める展開が恐ろしい。
見慣れたスマートフォンの画面や通知音、メッセージのやり取りといった日常的なものが、次第に恐怖の装置へと変わっていく。ネット上に残した情報や、何気なく利用しているサービスが、悪意を持つ相手の手に渡ればどうなるのか。本作はそんな現代社会の不安を真正面から突きつける。
シン・ヘソンが体現する「普通の女性」が壊されていく恐怖
スヒョンを演じるシン・ヘソンの演技も、本作の大きな見どころだ。
スヒョンは最初から強いヒーローではない。詐欺の被害に遭えば怒り、次々と起こる異常な出来事に怯え、誰にも信じてもらえない状況に絶望する、ごく普通の女性として描かれる。
安全であるはずの自宅にいても安心できず、仕事にも人間関係にも影響が及ぶ。逃げ場を一つずつ奪われ、精神的に追い詰められていく姿は、見ているこちらまで息苦しくなるほどだ。
そしてシン・ヘソンは、そんな絶望の底に落とされた女性が、それでも生き残るために必死に抵抗する姿を迫真の演技で体現している。
ただ悲鳴を上げるだけではない。恐怖や怒り、絶望、そして生きようとする意志が入り混じった彼女の表情が、物語に強い緊張感を与えている。
姿の見えない犯人だからこそ恐ろしい「ステルス型」の恐怖
本作で特に印象的なのは、犯人が姿を現して直接襲いかかるよりも先に、ネットを通じてスヒョンの生活を少しずつ破壊していくことだ。
大量のデリバリーが自宅に届く。
知らない人間が突然、家を訪れる。
自分の知らないところで、誰かが自分になりすましている。
こうした出来事は、一つ一つを見れば派手な殺人シーンではない。それでも、犯人がどこから見ているのか分からず、次に何をされるのかも分からないため、強烈な恐怖を生む。
特に恐ろしいのは、スマホやネットが便利な道具であると同時に、悪意を持つ相手にとっては人間の生活に侵入する入口にもなり得るという点だ。
家にいても安全ではない。
周囲に助けを求めても、誰が味方なのか分からない。
姿の見えない相手によって日常が壊されていく「ステルス型」の恐怖が、本作を単なる殺人鬼映画とは異なる作品にしている。
後半は一気に加速!韓国スリラーらしい緊迫の展開
中盤まで本作は、静かに観客の精神を追い詰めていくサイコスリラーとして進行する。
しかし、物語が後半へ向かうにつれて状況は大きく動き出し、緊迫感は一気に高まる。
警察のチュ刑事たちが事件の核心に迫り、これまで姿の見えなかった恐怖がより具体的なものとなっていくことで、作品のテンポも大きく変化する。
前半でじっくり積み上げられた恐怖が、後半では一気に爆発する構成も秀逸だ。
「そこまでやるのか」と思わせる容赦のなさと、最後まで気を抜けないスピード感は、まさに韓国スリラーの醍醐味といえる。
総評:便利な日常のすぐ隣にある「現代の怪談」
『ターゲット-出品者は殺人鬼-』は、ネット社会の匿名性や個人情報の脆弱さを、身近なフリマアプリという題材を通して描いた現代的なスリラーだ。
「怪しい相手とは取引しなければいい」という単純な話では終わらない。ごく普通の生活を送る人が、たった一度の取引をきっかけに「ターゲット」にされてしまう可能性を描いているからこそ、その恐怖は現実味を帯びる。
観終わった後、スマートフォンに表示される見慣れたアプリや通知が、少しだけ違って見えるかもしれない。
サスペンスやスリラーが好きな人はもちろん、フリマアプリなどネット上の個人間取引を利用したことがある人にこそ刺さる作品だ。
日常のすぐ隣に潜む悪意を描きながら、エンターテインメントとしても最後まで観客を引きつける――。
『ターゲット-出品者は殺人鬼-』は、便利なネット社会の裏側に潜む恐怖を突きつける、見応えのあるリアルタイム・スリラーである。
『ターゲット-出品者は殺人鬼-』はどこで見られる?
2026年8月現在、映画『ターゲット-出品者は殺人鬼-』は、PrimeVideo、U-NEXT、Hulu、DMM TVなどで配信中。なお、配信状況は変更される場合があるため、視聴前に各サービスの公式サイトで確認したい。
配給:TCエンタテインメント
原題:소울메이트/英題:Don’t Buy the Seller/2023年/韓国/101 分/ビスタ/5.1ch/R15
字幕翻訳:福留友子
◇
韓国映画「ターゲットー出品者は殺人鬼ー」公式予告