絢爛豪華な戦国絵巻であるとともに、一人の人物の成長物語でもある点が原作の面白さであり、また、このドラマが受けた理由でもあろう。
幼年時代から青年時代にかけて人質生活を送る徳川家康。そして、織田信長、豊臣秀吉という天下人たちの陰に隠れながら、ひたすら辛苦に耐え、やがては天下泰平の世を作り上げていく。
また、後年になってからの天下分け目の関ヶ原の合戦、大阪冬の陣、夏の陣は、そんな戦国の世を終わらせるための、最後の闘いでもあった。
脚本の小山内美江子は理想主義の家康像を作り上げるとともに、同時代の武将たちやその妻子の人間関係も軸としてドラマを築いていく。
こうしたダイナミックでありつつ、繊細な物語作りによって、久しぶりにヒット大河ドラマとなり、平均視聴率が31.2パーセント、最高視聴率が37.4パーセントという高視聴率を獲得した。

なお、この『徳川家康』は、全50話、それに4回からなる総集編も全て残存しており、いまもなお一年分の大河ドラマをじっくりと堪能できるのだ。
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45歳で駿府城に移るまで徳川家康が過ごした浜松城は、三方ヶ原台地の斜面に立ち、姉川、三方ヶ原、長篠などの大きな合戦でも常に拠点とされてきた。
家康が去った後、浜松城には譜代大名が入り、歴代城主からは幕府の要職に登用された者が多かったために後に「出世城」と呼ばれるようにもなる。
明治になって、城郭は壊されていたが、昭和33(1958)年、旧天守台の上に新天守閣を再建した。
現在では、城内に家康関連の資料や武具が展示され、展望台からは浜松市街を一望できる。