幕末の煮えたぎるような熱い青春群像を描いた『花神』

エンタテインメント ドラマ 歴史・時代劇
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大河ドラマ第15作目は司馬遼太郎原作の『花神』である。
今でも、このドラマのファンは多いのは、幕末を舞台とした群衆劇、それも当時の若者たちを多く登場させてたからである。原作としては『花神』だけでななく、『世に棲む日日』、『十一番目の志士』、『峠』、『酔って候』を使っており、とくに吉田松陰とその門下生たちを描いた『世に棲む日日』が司馬作品らしい血気盛んな志士群像を描いた作品だけに、活気に溢れたドラマになっている。
もちろん『花神』が筋立ての中心だから、ドラマの主人公は大村益次郎である。官軍の司令官として「倒幕」の偉業を成し遂げた男だが、司馬が作品中で何度も書いているように、小説的には「面白味のない」人物なのだ。単調な暮らし、愛想もない人間である。
そこで、彼を取り囲む群像が必要となってくる。

花神周防国の村医者の家に生まれた村田蔵六、後の大村益次郎(中村梅之助)は、蘭学を学ぶために大阪の緒方洪庵の適塾に入門する。地道な努力の得意な蔵六は塾頭となり、そして故郷で村医者となるのだが、長州藩は彼を一村医者として置いておかなかった。
一方、長州藩には、当時の最も先鋭的な思想家、吉田松陰(篠田三郎)がおり、高杉晋作(中村雅俊)をはじめとするその弟子たちに継がれていったのだった……。

堅物で、まったく遊びというものを知らない大村益次郎を中村梅之助が好演。その役づくりは原作者も絶賛したという。シーボルトの娘イネを浅丘ルリ子が演じ、高杉晋作役の中村雅俊は時代劇初出演であった。『十一番目の志士』の天堂晋助(架空の人物)は田中健、若き山県有朋を西田敏行、そして『峠』の主役で当時としては画期的な開明論者だった、越後長岡藩の家老、河井継之助を高橋英樹が演じている。

平均視聴率は19.0パーセントで最高視聴率は25.9パーセントだった。現在、NHKに映像として残っているのは総集編と第19話だけである。

山口県の萩には、吉田松陰ゆかりの松下村塾跡と松陰神社がある。JR東萩駅から歩いて15分ほどのところで、神社は松陰の没後30年ほどを経た明治23年に建立された。敷地内に、安政の大獄時に幽閉された旧宅が保存されていて、吉田松陰歴史館もある。
吉田松陰は、ここに幽閑されていた2年半の間に高杉晋作、伊藤博文、久坂玄瑞、山県有朋ら塾生たちに講義をし、明治維新の偉業を成し遂げさせたのである。
当時としては革新的な、民兵による奇兵隊を組織した高杉晋作については、「萩博物館」の「高杉晋作資料室」で遺品が展示されている。
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