VHS誕生秘話をドラマとして描いた『陽はまた昇る』

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実話ものの映画は、たいてい「泣ける」作品が多い。で、この『陽はまた昇る』も「泣ける」。
ただ、いわゆるお涙ちょうだい「だけ」になっていないのは、家庭用ビデオテープといういまや過去の産物となりつつある分野で、当時の雄であるソニーのベータマックスに対抗し勝ち抜いたVHSを開発。そうした時代の証言であるとともに見事なまでに人間ドラマとなり得ているからだろう。
NHKのドキュメンタリー番組「プロジェクトX」が火をつけた「モノ作り誕生秘話」をきちっと映画化したということでも、評価は高い。原作は、佐藤正明のノンフィクション『映像メディアの世紀』。

高度経済成長の最中、録音テープがオープンリールからカセットへと移行し、すでに一般家庭へも行き渡っていった。次に期待されていたのは、安価で手軽な家庭用ビデオテープレコーダーの開発であった。5000億円規模の市場とも言われていた。
業界8位の弱小メーカー、日本ビクターはビデオ事業に乗り出していたが、なかなか成果を出せずにいた。不採算部門として、いつ事業部が潰されるか分からない。
事業部長に就任した加賀谷(西田敏行)は、そこに可能性を見出し、何とか形にしていこうと努める。
そのころ、若者に最も人気のあった企業のソニーが、ついに家庭用VTR、ベータマックスを開発し、発売を開始するのだった……。

ベータとVHSとの闘いの結末は、誰もが知っている。汎用性を求められる商品で、他との差別化を強めすぎると、けっきょくは駆逐され、淘汰されていくという、商売の鉄則が導き出されたのである。
西田敏行演じる加賀谷だけでなく、登場人物のほとんどは実在の人物である。ただ、すべて仮名になっている。
企業名のほうは、実名を使っていて、これで「ドキュメンタリー性」が感じられるようだ。
弱小メーカーの、さらに不採算部門のリーダーを西田敏行が好演、渡辺謙、井川比佐志、倍賞美津子、仲代達矢、江守徹らが脇を固めている。
なお、最近封切られ、大ヒットを記録している『剱岳』を執念で作り上げた木村大作が、撮影を担当しているのも見逃せない。
  • 監督:佐々部清
  • 西田敏行、緒形直人、篠原涼子
  • 年月日 ~ 年月日

(c)東映