戦国時代、「政治」と深く関わった文化人『利休』

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戦国時代を描いた映画やドラマでは、必ず茶人、千利休が重要な脇役として登場する。しかし、戦国の世と言えば、基本的には武将たちが活躍する時代だから、群雄割拠、下剋上の荒武者がドラマの主人公になることが多い。この静かな茶人については深く知らされることがなかったのである。
千利休という人は、戦国武将たちに多大な影響を与えていながら、その人となりがあまり深く描かれないという不思議な存在なのである。
この作品は、原作が野上彌生子の小説。そして、草月流第三代家元でもある勅使河原宏が監督し、怪優・三國連太郎が千利休、それに負けない名優の山崎努が豊臣秀吉を演じて、目一杯の演技合戦が繰り広げられる。

千利休は、仕えていた織田信長が本能寺の変で殺され、今度は、その後を継いだ秀吉に仕えることになる。
しかし、茶の道を理解しない秀吉と利休とは、ともに相入れないものを感じ取っていた。
一方で利休は、茶の湯によって戦国武将たちに崇敬の念をもたれるようになっていく。
秀吉もまたそんな利休を誇らしく思うのだが、腹心・石田三成の言によって秀吉と利休との距離が開いていき、ついには修復できないほどになるのだった……。

安土桃山の絢爛豪華な衣装をワダエミが担当。さらには、脚本に赤瀬川原平、他にも信長に松本幸四郎、家康に中村吉右衛門と、豪華スタッフ、キャストである。
「千利休」という「茶道」の創始者のことを知るとともに、それが日本人の心にいかに受け入れられたかを知るうえでも必見である。

この『利休』の封切られた年は、偶然にも『本覚坊遺文』(熊井啓監督)も公開されるなど、千利休に関してさまざまなドラマが現れた。私たちはそれによって千利休の実像に迫れたともいえる。
この『利休』を見た後に、熊井作品と見比べてみても面白いだろう。
  • 三國連太郎、三田佳子、松本幸四郎、中村吉右衛門、田村 亮、岸田今日子、北林谷栄、山口小夜子、板東八十助(五代目)、嵐 圭史

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