原作は海音寺潮五郎。上杉謙信(石坂浩二)、武田信玄(高橋幸治)という名将の個性と二人の名勝負の数々が一年にわたって展開した。後半には、最大の山場である川中島の戦いが用意され、ドラマを盛り上げている。

とくに上杉謙信役の石坂浩二は、この作品で一気に国民的スターとなる。ちなみに、高橋幸治と石坂浩二とは、『太閤記』でも織田信長役と石田三成役とで共演している。
平均視聴率は25.6パーセントで、最高視聴率は32.4パーセントであった。
現在、NHKに残っている映像は第50話「川中島の章・その四」と総集編の前編のみである。総集編の前編は、個人の視聴者が録画していたビデオテープを寄贈されたもので、市販のビデオテープは白黒だったため、これも白黒である。
石坂浩二の上杉謙信はインパクトが強かったようで、いまでも地元の新潟では謙信といえば石坂浩二のようである。
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上杉謙信と武田信玄との合戦の舞台となった川中島。もちろん、「島」とついているが、犀川と千曲川とが合流する地のことを指している。
いまは普通の平地であるが、戦国時代の川中島は小さな川がいくつも流れる沼沢地であった。肥沃な土地で農業にも適しており、江戸へと向かう交通の要所でもあったため、上杉、武田ともに手に入れたい所だったのだ。
すぐ北には善光寺があり、宗教的にも価値の高い土地なのである。
ちなみに川中島の戦いは計五回行なわれたといわれるが、実際にここで上杉軍と武田軍とが対峙したのは、二回だけである。とくに四次合戦とされる1561年のものが最大の戦いで、これだけを「川中島の戦い」とする説もある。