「守銭奴」と蔑まされようとも、愛する者のために生き抜いた男の運命を描く『壬生義士伝』

新撰組を題材にした小説は数多いが、この浅田次郎の作品はかなり異色だろう。主人公は東北出身の一隊士、吉村貫一郎。腕はたつが、いわゆる武士道とはかけ離れたところで生きている。
武士階級の地位が揺らぐ時代、新撰組をも含めた侍たちは、武士としての矜持をいかに保つかが問われていくのだ。

南部藩を脱藩し、新撰組に入隊した吉村貫一郎（中井貴一）は故郷にいる家族へ仕送りをするため、汚いほど金に執着する。そのため、他の隊士からは後ろ指を指されていた。
しかし、吉村は恥をかこうが武士道に背こうがおかまいなしである。そんな吉村を軽蔑しながら、腕は認めている斉藤一（佐藤浩一）。
激動の時代、新撰組は破滅への道へと突き進んでいく……。

ともに二世俳優である中井貴一と佐藤浩一の二人が、けっして親の七光ではないという力量を見せつけた作品でもある。
監督の滝田洋二郎は、先ごろ、新作『おくりびと』（本木雅弘主演）がモントリオール世界映画祭でグランプリを受賞したところである。