日本未公開の韓国映画5作を3日間一挙初上映!『大阪韓国映画祭』取材レポート&悲喜交々の作品感想も

2021年11月29日18時16分映画
『大阪韓国映画祭』会場

11月26日~28日の3日間にわたってナレッジシアター(グランフロント大阪 北館 4F)にて「大阪韓国映画祭」が開催され、『父親叫喚(ちちきょうかん)』『輝く瞬間』『かもめ』『息子の名前で』『光と鉄』 の5作品が上映され、多くの韓国映画ファンでにぎわった!各予告動画は、韓国映画サイトにてオリジナル版が視聴できる。



「大阪韓国映画祭」は2015年より開催しており、人気俳優・女優が訪れ、日本の韓国映画ファンと韓国の映画関係者との交流の場を作り、多くの韓国映画のファンから好評を得ている韓国映画祭。7回目となる今年は、多くの映画ファンを招待して日本未公開作品の上映会となった。
第7回 大阪韓国映画祭|告知記事

韓国映画祭

記者が取材したのは26日(金)『かもめ』、27日(土)の『輝く瞬間』『息子の名前で』『光と鉄』、28日(日)『父親叫喚』。どの回も徹底した新型コロナウイルス感染予防対策を取ったうえで、満席の大盛況。上映の後に大きな拍手が沸き上がった。以下、鑑賞した作品を記者の感想と共にご紹介しよう。

【鑑賞レポート】

かもめ© 2020, DANKOOK GRADUATE SCHOOL
OF CINEMATIC CONTENT, ALL RIGHTS RESERVED
『かもめ』は、日本でもニュースなどで「MeToo運動」が取り上げられた2018年に企画が始まった作品。水産物市場の商人である中年女性が市場の一人の商人仲間からの性暴力に遭いながらも、加害者が市場の再開発反対闘争の中心人物ということもあって、仲間からは「大目に見ろ」と言われ、被害者が妻だと知らない夫からは心無い言葉を言われてしまう。結婚直前の長女の婚家からも嫌味を言われ、心身ボロボロに傷ついた主人公が、2人の娘の協力を得て新しい第一歩を踏み出すというストーリー。全編通してドキュメンタリータッチで描かれた演出が、やりきれない思いを増幅させ、鑑賞後も強い怒りが残る一作だった。
2020年・75分・日本語字幕・갈매기(原題)
監督 キム・ミジョ
出演 チョン・エファ、チャン・ユ ほか


輝く瞬間2020 Copyright© MYUNG FILMS『輝く瞬間』は、美しい済州島が舞台の究極の年の差ロマンス。済州島出身でドラマでも大活躍の名女優コ・ドゥシムと、イケメン俳優チ・ヒョヌの共演。コ・ドゥシムは愛を忘れて生涯海女として生きてきた高齢の女性を演じ、チ・ヒョヌはそんな彼女の生き様を韓国一の海女として紹介しようとする若いドキュメンタリー監督。具体的な年齢は明かされないものの、そのセリフから推察すると2人は70代と20~30代と思われる。チ・ヒョヌといえば、「セレブの誕生」「千回のキス」などで“年下男子”として、世のヌナ(お姉さま)たちの心を蕩かせた年下男子だが、今作では年の差、何とダブルスコアー越え!だがお互いを「ボンクラ」「ハルモニ(おばあさん)」と呼んでいた2人が、互いにひかれあい、それぞれ胸に抱く心の傷を慰め合いながら愛し合うようになる課程が何とも自然で、出来上がったドキュメント番組のエンディング映像が2人の恋を優しく、そして切なく表現している。
2020年・95分・日本語字幕・빛나는 순간(原題)
監督 ソ・ジュンムン
出演 コ・ドゥシム、チ・ヒョヌ ほか


息子の名前で©2021 Hon Film Company Co,. Ltd. All Rights Reserved『息子の名前で』は、1980年5月に起きた痛ましい光州(クァンジュ)事件をテーマにした復讐劇。主人公がなぜ、誰に復讐しようとしているのか?そして息子との約束とは?開かずの部屋の中には何が隠されているのか?「光州、正義、軍…」などいくつかのキーワードが出てくるので、想像を働かせるものの、終盤になるとミスリードされていたことに気づき、大どんでん返しの結末に驚かされた。名優アン・ソンギが悲哀ある主人公を演じる他、最近では『無垢なる証人』でチョン・ウソンの父親役を演じるなど韓国エンタメ界の重鎮パク・クニョンとの演技対決は骨太作品として見ごたえ十分。そんな中でもアン・ソンギのベルトを使ったアクションや、「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」などドラマでも活躍の女優ユン・ユソン扮する食堂の店員に向ける、強面アン・ソンギの優しい表情とほのかなロマンスなども見どころ。
2020年・90分・日本語字幕・아들의 이름으로(原題)
監督 イ・ジョングク
出演 アン・ソンギ、ユン・ユソン、パク・クニョン ほか


光と鉄© 2020 ONETAKE FILM『光と鉄』は、事故により夫を失った2人の妻の物語。被害者は2年間意識不明に、加害者は死亡。加害者の妻は夫が起こした事故への罪の意識から心身に異常をきたすほど悩んでいた。一方、被害者の妻も一人娘を抱えながらいつ意識が戻るのかもわからない夫の世話で披露困憊。そんな2人が同じ職場で働くことに。ところが被害者の一人娘の一言がきっかけとなり、事故当日の真実が少しずつ明かされ、2人の妻たちの関係も変わっていく。誰が被害者で誰が加害者なのか?いったい事故の責任は誰にあるのか?最後の最後までどんでん返しの連続で先が読めない展開が続く。「椿の花咲く頃」のヨム・ヘランと「ミスター・サンシャイン」のキム・シウン。揃ってドラマでも演技派として注目されている2人が取っ組み合いする体当たり演技にも注目。
2021年・107分・日本語字幕・빛과 철(原題)
監督 ペ・ジョンデ
出演 ヨム・ヘラン、キム・シウン、パク・ジフ ほか


父親叫喚(c) 2020 Little Big Pictures All Rights Reserved.『父親叫喚』は、ガールズグループf(x)のメンバーのクリスタルが女優チョン・スジョンとして長編映画初主演した作品。そんな彼女が演じるのは婚前妊娠をするトイル。お相手は彼女が家庭教師を務める高校生(1年浪人なので韓国では成人)。トイルの口うるさい母親はダメンズ夫と離婚して四字熟語が得意の現夫とにぎやかに3人暮らし。高校生の彼氏の両親は利口なトイルがお気に入りでもろ手を挙げて2人の結婚を応援!だがトイルの両親からは激怒され、トイルは実父探しに出る。トイルの名前は土曜(トヨイル)と日曜(イリョイル)の間に生まれたために実父が“トイル”と名付けた。新しい父がキム(金)姓なので“キム・トイル(金土日)”となり、一旦は名前で笑わせるが、この名前がきっかけとなってトイルは無事実父と再会を果たし、新旧の父親も顔を合わせることになる。ところが、高校生夫が…!冒頭から抱腹絶倒させられコメディ映画と思いきや、口やかましい母親の新たな一面と人生の酸いも甘いも知る彼女の言葉に最後はホロリと泣かされた。
2020年・95分・日本語字幕・빛나는 순간(原題)
監督 ソ・ジュンムン
出演 コ・ドゥシム、チ・ヒョヌ ほか


映画祭

どの作品も喜怒哀楽、様々な感情が吹きあがる名作揃い。こんな作品がまだ韓国には埋もれているとは、韓国エンタメ界の底力をまざまざと見せつけられた3日間だった。そして、悲喜交々、様々なジャンルの感動作をチョイスしてくれた主催者である駐大阪韓国文化院の担当者各位に拍手を送りたい。

韓国Naverで予告動画チェック日本語字幕なし
『갈매기(かもめ)』
『빛나는 순간(輝く瞬間)』
『아들의 이름으로(息子の名前で)』
『빛과 철(光と鉄)』
『애비규환(父親叫喚)』

kandoratop【韓国映画】