【韓ドラコラム】「七日の王妃」の奇抜な髪形の側室は朝鮮三大悪女の張緑水(チャン・ノクス)
NHK・BSプレミアムにて4月10日から放送している「七日の王妃」に登場する、燕山君(ヨンサングン)の側室チャン・ノクスは実在した張緑水がモデル、今回は張緑水を紹介しよう。
「七日の王妃」は16世紀、朝鮮第10代王・燕山君(ヨンサングン)の治世を舞台にわずか七日で廃位になった端敬(タンギョン)王后の実話をモチーフに、美しき王妃の悲劇的な人生をスリリングに描いた韓国時代劇。ドラマ未視聴の方は【「七日の王妃」を2倍楽しむ】で、時代背景や各話のあらすじと見どころなどまとめて紹介しているので参考にされたい。
写真:@navicon張緑水は朝鮮王朝史上最も暴君とされる燕山君が語られるときに必ずセットで登場する。燕山君の側室として入宮し、暴政を敷いた王と一緒に日夜享楽にふけり民衆から憎悪された。愛憎と強欲に満ち溢れた張緑水は魔性の女と呼ばれ、後に「三大悪女」の1人と数えられている。他の2人は鄭蘭貞(チョン・ナンジョン)と張禧嬪(チャン・ヒビン)。
■実際の張緑水は?(生年不詳~1506年)
史実によれば、張緑水の父は忠清道文義県令を勤めた張漢弼で母は妾だった。賤民の身分で育ち、第8代王・睿宗(イェジョン)の息子の齊安大君(チェアンテグン)の家僕(家の奴婢)に嫁いで息子も産んでいる。だが、歌舞を含めた多方面の芸術分野に天才的な才能を持ち整った容姿の張緑水は超売れっ子の妓生(キーセン)となった。
容姿については、30歳を過ぎても16歳のようでもあったとされる一方で、絶世の美女だった鄭蘭貞に比べて張緑水はそこまでの美形ではなかったとも伝わっている。諸説あるが、とにかく燕山君好みであったのは間違いない。
そんな張緑水の噂は燕山君の耳にも届き、1502年に側室の1人として迎えられた。燕山君には居昌(コチャン)慎氏(シンシ)(廃妃慎氏)を含めて子供をもうけた夫人は4人いたが、他にも数えきれないほどの側室がおり、中には張緑水のように子連れの妓生出身もいた。その中でも張緑水は格別の寵愛を受けた。
その証拠に、燕山君は賤民出身の張緑水に従四品にあたる淑媛(スグォン)の位を与え、彼女の悪口を言った側室たちの首を引き抜いたり、チマ(スカート)の裾を誤って踏んだ妓生を斬首してさらし首にしたりしたとある。張緑水は王の寵愛を利用して賤民である実の姉と息子を免賤して良民にし、姉の夫を官職に付けている。また、王宮外に私邸を作るために近隣の民家を破壊したり、官船を利用して私貿易をして私財を蓄えたりと、やりたい放題。
1506年9月2日、クーデター「中宗反正」により燕山君が廃位されると、燕山君の後ろ盾で権力を享受していた張緑水や任士洪(イム・サホン)らはみんな捕らえられ、斬首された。放置された張緑水の遺体は人々から投げつけられた石で石塚ができたとあるから、民たちからの憎悪の深さが分かる。
画像:KBSより
「七日の王妃」ソン・ウンソ■ソン・ウンソが演じたチャン・ノクス
「七日の王妃」では「ボイス~112の奇跡~」シリーズで警察官役を演じたソン・ウンソが、奇抜な髪形のチャン・ノクスに扮している。時代劇でよく見る三つ編みタイプは王族の既婚女性の髪型で、妓生は頭の上や横に盛り上げた様々なスタイルの髪形を楽しんだ。ちなみに、ほとんどがカチェという鬘(かつら)を使用しており、これはとても高価なために1756年第20代王・英祖がカチェ禁止令を出すと、木で作ったカチェまで登場したとか。詳しくは史劇の女性の髪形についてで解説。
「七日の王妃」のチャン・ノクスは王の側近イム・サホンと手を組んでチェギョン(後の端敬王后)を利用し、燕山君の王位を脅かすヨク(晋城大君)を亡き者にしようとする。淑媛の地位を与えられ、献上品を運ぶ進上船で私財を蓄えたりするのは実在した張緑水と同じだが、任士洪と手を組んだといった史実は見当たらない。チャン・ノクスの最期も史実とは違っている。奸計をめぐらせた悪女の末路を「七日の王妃」はどう描くのか、お楽しみに。
©2017 MBC 「逆賊」イ・ハニ■その他のドラマに出てくるチャン・ノクスは?
「七日の王妃」と同年に放送された「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」ではイ・ハニがチャン・ノクスを演じている。こちらは妓生時代も描かれ、彼女の子供も登場し、終盤では張緑水の遺体の上に積みあがった石塚をイメージさせる演出もあり、実在した張緑水に近い。歴史に伝わるほどの悪行は描かれないが、これも一説には張緑水の悪行は誇張されているともいわれているので、実像にかなり近いかもしれない。もっとも「逆賊」のチャン・ノクスは妓生時代に主人公のホン・ギルドンと恋仲になるが、これはフィクション。ホン・ギルドンは後に義賊となり、「朝鮮三大義賊」の1人と称される洪吉童がモデル。「三大悪女」と「三大義賊」を恋仲にするとは制作陣の着想に脱帽だ。ちなみに他の2人の義賊は林臣正(イム・コクチョン)、張吉山(チャン・ギルサン)。
※「逆賊」で描かれるチャン・ノクスについてはコチラで詳しく紹介⇒最終回考①
※他にも張緑水が登場する作品は以下のように実に多い。
【映画】
暴君燕山(1962年、日本未公開、配役: ト・グンボン)
燕山君(1987年、日本未公開、配役: カン・スヨン)
燕山日記(1988年、配役: キム・ジナ)
王の男(2005年、配役: カン・ソンヨン)
背徳の王宮(2015年、配役: チャ・ジヨン)
【ドラマ】
思母曲(TBC、1972年、日本未公開、配役: ユン・ジョンヒ)
朝鮮王朝五百年 雪中梅(MBC、1984-85年、日本未公開、配役: イ・ミスク)
王妃チャン・ノクス -宮廷の陰謀-(KBS、1995年、配役: パク・チヨン)
王と妃(KBS、1998-2000年、配役: U;Nee)
王と私(SBS、2007-08年、配役: オ・スミン)
インス大妃(JTBC、2011-12年、配役: チョン・ソミン)
た「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」(MBC、2017年、配役: イ・ハニ)
「七日の王妃」(KBS、2017年、配役:ソン・ウンソ)
◇NHK「七日の王妃」番組公式サイト
2022年4月10日スタート 日21:00~22:00
【作品詳細】【「七日の王妃」を2倍楽しむ】