韓国ドラマ「ジンクスの恋人」は不運続きの青年スグァン（ナ・イヌ）と、彼の呪いを解くために現れた謎の女性（ソヒョン/少女時代）が、残酷な運命を乗り越えていくファンタジーロマンス。本作視聴中に覚えた既視感について紹介しよう。YouTubeにて日本版予告動画が視聴できる。



本作は人気ウェブ漫画の実写作品で、脚本を『がんばれ！チョルス』チャン・ユンミが手掛け、「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」（以下、「王女ピョンガン」）のユン・サンホ監督とスタッフが担当した。

主人公で不運続きの魚屋の青年をナ・イヌが演じた。ナ・イヌと言えば、「王女ピョンガン」で主人公オン・ダルを演じ、安定した演技力とアクションが高く評価されKBS演技大賞で新人賞を受賞した。オン・ダルの役はもともと別の俳優が演じていたが、事情により降板し、ナ・インヌがピンチヒッターとして主人公の7話から撮影に入り最終回まで演じた（主役交代については作品紹介で解説）。

ナ・イヌと再タッグを組んだユン監督は「純粋さが引き立つ演技を見せた」とナ・イヌを高く評価した。また本作は韓国版『ラプンツェル』ともいわれた作品で、監督はヒロインを演じた少女時代のソヒョンについても「ソヒョンは、韓国版『ラプンツェル』で遜色のない個性と熱演を繰り広げた」と手放しで褒めている。

未視聴の方は、以下の予告動画を見れば雰囲気がつかみやすい。
◇YouTube予告動画

■「ジンクスの恋人」あらすじ
手に触れた人の未来を見る特殊な力を持つスルビ（ソヒョン）は、予言で大企業「クムハグループ」を財閥に成長させた母親同様、ホテルの秘密の部屋に隔離されていた。スルビは普通の少女に戻るために運命の人の愛を手に入れようとホテルを抜け出す。バスの中でスグァン（ナ・イヌ）と出会い、彼を“王子様”と呼んでついていく。スグァンは迷惑がりながらも仕方なくスルビを自宅に連れ帰る。スルビは彼の母親が用意してくれた平凡な食卓に感動し、スグァンと一緒に訪れた遊園地や夜の街を歩き、夢のような一日を過ごす。その後、スグァンはスルビを無事にホテルに届けるが、それ以降不運に見舞われてしまう。

© 2022 Victorycontents Co., Ltd.再び秘密の部屋に閉じ込められたスルビは2年後、“王子様”に会うためにまたホテルを脱出する。ところが市場で魚屋を営む彼はスルビのことを憶えておらず、災難続きの人生を送っていた。そんな彼のために幸運の女神になろうとするスルビだが、世情に疎い彼女は次々と問題を起こしスグァンも巻き込まれてしまう。それでも生来の賢さと明るさ、そして予知能力で市場の人に幸運をもたらすスルビは市場の人々とも親しくなる。そして迷惑顔だったスグァンもスルビに心を開き、2人は愛し合うようになるが…。

■「ジンクスの恋人」は「王女ピョンガン 月が浮かぶ橋」の現代版？
あらすじを読めば、本作が前述した韓国版『ラプンツェル』のようだと納得できるだろう。亜麻色の長い髪のソヒョンが演じたスルビは、高い塔に閉じ込められたラプンツェルそのもの。だが、韓国ドラマファンなら「王女ピョンガン」を思い出した方も多いのでは？

「王女ピョンガン」の舞台は6世紀半ばの高句麗で、ヒロインのピョンガン王女は、聡明で正義感が強く、将来は父の跡を継いで君主になり国を守るという夢を持っていた。だが、陰謀により母親が殺害され、自身も記憶を失い刺客として育てられる。そんな彼女が山中でオン・ダルに助けられ彼の村で暮らすことになり、やがて愛し合う。

「王女ピョンガン」より ナ・イヌ「ジンクスの恋人」も「王女ピョンガン」も市場/村人と次第に心を通わせていくのは同じで、ヒロインの正体を知って一度はヒロインに冷たい目を向けたりもする。また、ある事情からスルビはホテルに戻り、ピョンガンは王女として王宮に戻る。そしてナ・イヌが演じた主人公も愛する人を守るためにホテル/王宮に乗り込むことになるのも同じだ。さらにネタバレになるので詳しくは書けないが、結末も男女を逆にした同じような展開が待っており、ドラマが進むほどに既視感を覚える。

「王女ピョンガン」より　©2021 Victory Contents Co., Ltd. All rights reserved
左から：コ・ゴン、チェ・ユファ、キム・ヒジョン
さらにそれを際立たせるのがキャスティングだ。主人公のナ・イヌ以外にも、「王女ピョンガン」でコ・ゴンを演じたイ・ジフン、ヘ・モヨン役のチェ・ユファ、タラ・ジン役のキム・ヒジョンらが特別出演している。

「王女ピョンガン」より ©2021 Victory Contents Co., Ltd. All rights reserved
左から：キム・ドンヨン、ファン・ヨンヒ、チョン・ウク、チャ・グァンス、チョン・インギョム
また、ナ・イヌの親友役だったキム・ドンヨンが本作でも兄貴分役で登場するほか、ナ・イヌの養母だったファン・ヨンヒを始め、村長役のチョン・ウクが本作でも義理堅い執事を、チャ・グァンスやチョン・インギョムが本作でも敵対する、同じようなイメージで出演している。

■もう一つの既視感
ところで、スルギとその母を秘密の部屋に閉じ込めるクムファグループの会長ソン・サムジュンをチョン・グァンリョルが演じているが、彼は時代劇「風と雲と雨」でも予知能力を持つヒロインを監禁する役を演じている。
「風と雲と雨」より © 2020 TV Chosun
左から：チョン・グァンリョル、チョン・ウクこちらにもチョン・ウクが出演していたり、ヒロインがともに予知の能力があったり、閉じ込められている部屋の庭が酷似していたりと「風と雲と雨」を髣髴とさせる。実はこの作品もユン・サンホ監督が演出しているのだ。

2作品から感じた既視感は決して嫌なモノではなかった。実はナ・イヌのキャスティングは「王女ピョンガン」の撮影中に行われたという。「王女ピョンガン」のピンチを救ったナ・イヌへのユン・サンホ監督からのご褒美とも思える本作は、監督の遊び心と「哲仁王后」でも存在感を示したナ・イヌが、現代ドラマでも献身愛の男をたっぷり見せてくれて、ファンにはたまらない一作と言えよう。ドラマのストーリーを楽しむとともに、2本の時代劇との共通点やダブりキャストなどをチェックするのも一興だ。

一方、ナ・イヌは初の刑事役を演じた「ずっと あなたを待っていました」が11月3日よりHuluにて独占配信開始し、ソヒョンは9月22日からスタートしたNetflixシリーズ「剣の詩」でヒロインを務めている。


「ジンクスの恋人」は2023年10月現在Huluで独占配信中で、KNTVにて11月5日よりTV初放送する。

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（配信予定作品含む）

■スタッフ
演出：ユン・サンホ
脚本：チャン・ユンミ
原作：ハン・ジヘ、ク・スル
原題：징크스의 연인（ジンクスエ ヨニン）

■キャスト
イ・スルビ役：ソヒョン
コン・スグァン役：ナ・イヌ
ソン・サムジュン役：チョン・グァンリョル
ミス役：ユン・ジへ
ソン・ミンジュン役：キ・ドフン
スグァン母役：ユン・ユソン
ホン・ソッキ役：ホン・ソクチョン
パン女史役：ファン・ヨンヒ
ユン・イヨン役：ファン・ソクジョン
パク・ソンドク役：ウ・ヒョン
ほか

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