韓国ドラマ「赤い袖先」が面白いワケ 2PMジュノのラブvsイ・セヨンのシスターフッド

09月20日10時20分ドラマ
©2021MBC

韓国人が愛する名君イ・サンを2PMのジュノが演じて大ヒットした「赤い袖先」は、これまでとは全く違うアプローチで描かれたロマンス史劇。ここでは他の作品とは違うロマンスの描き方に注目した。予告動画はYouTubeにて視聴できる。<※注意:結末のネタバレあり>



ドラマの年表:朝鮮王朝【ドラマの年表:朝鮮時代】「赤い袖先」は、宮女を愛した王と、王に愛された宮女との純愛物語。ジュノが演じるのは朝鮮第22代王・正祖(サン)。正祖に愛された宮女ドギムをイ・セヨンが演じた。

【ドラマの年表:朝鮮時代】を見ると正祖の時代を描いた他の作品がひと目でわかる。年表でピンクに色分けしたのはロマンスを中心にしたドラマ。

そうしたドラマと本作はどこか違うのか?

■ドギム目線で「宮女」の生活にフォーカス
王様が登場する作品に必ず登場するのが宮女だ。王妃が出てこない作品はあっても宮女が出てこない作品はまずない。「赤い袖先」はこれまで脇役だった宮女たちの生活にフォーカスを当てているのがこれまでとは違うところだ。

そんな宮女の道は長い。まず、15年の女官見習い(センガクシ)期間を終えて「笄礼式(キョレシク)」という儀式を経てやっと「内人(ナイン)」と呼ばれ正式に宮女と認められる。宮廷内のほとんどすべての仕事を宮女たちが行い、その呼び名も、至密尚宮(王族の身の回りの世話を行う)、気味尚宮(毒見係)、侍女尚宮(宮廷の本や文書の管理)、監察尚宮(宮女たちを取り締まる)、堤調尚宮(最高責任者)など様々。ドラマではドギムら仲良し宮女4人組を通して、宮女のお仕事や、普段の暮らしぶり、宮女あるあるを楽しく見せてくれる。

■「王の女」の不条理をがっつり描く
宮女は全員が王の女。重病など健康上の問題で働けなくなるまで王の女なのだ。だからほかの男性と結婚もできない。他の男性と心を通わせようものなら死罪となる。

そんな宮女たちの一番の出世は側室。だが1人の王に500人~600人も仕えるのだから王の目に留まることはほとんどない。だから王の目に留まりやすい至密尚宮は人気。王の承恩(スンウン)を受けて「特別尚宮」になり、その後「側室」となれば大出世だ。男児を産んでその子が王にでもなれば大きな権力が手にはいる。
※宮女と側室については、【朝鮮王朝豆知識】「◆宮女の身分(内命婦)」で詳しく解説している。

だが一方で、側室になっても他にも側室がいて「側室カースト」も厳しく楽ではない。王に見向きされなくなったらみじめな暮らしが待っている。

幸いにもドギムは側室になっても一番愛された側室。だが仲良しの宮女仲間と気楽に付き合えなくなり、許可なく宮廷から出ることもできない。親族が亡くなっても喪服を着ることも弔問に行くことさえ許されない。ドラマ終盤、休暇を貰って宮廷から出ていく仲間たちを、側室ドギムが寂しく見送るシーンがある。「なぜ側室になってしまったのか?」と後悔の言葉が聞こえてきそうだ。このドラマはそんな「王の女」の不条理もしっかり描かれている。

■「王の愛」は「シスターフッド」に勝てなかった
宮女にとって王の寵愛を受けるのは出世の道。しかも好意を持っている相手だ。だが、ドギムは仲間と楽しく自由に暮らせる宮女の暮らしが気に入っていた。だからサンも一度はドギムを諦め、手放した。だが結局は愛を貫くために彼女の自由を奪った。

「純愛を貫き主君として思いのままに幸せを手に入れたサンと、愛を選んだが為に自分らしい自由な生活を失ったドギム」

宮女時代は命懸けで友を助けたドギムが、側室になってからはサンの立場を考え、友を見捨てるしかなかった。

ドギムにとってはいつも「愛より仲間」だった。だからサンを愛しながらも恨んだ。だから決して「愛している」と言わなかった。古今東西、多くの純愛物語が愛する人と添い遂げるのがハッピーエンドなのに、ドギムはそうではなかった。臨終でドギムが会いたかったのは愛する人ではなく、友だった。ドギムがサンに遺した言葉がそれを如実に表している。

「来世で会っても見なかったふりをして欲しい、来世では自分の望んだ通りに生きてみたい」

この言葉を聞いたサンのショックは如何ばかりか?

王の女には愛と友情の両立ができないのだ。仲良しグループの中で唯一生き残って提調尚宮となったギョンヒが、サンと対面するシーンがある。「お互い一人だ」と慰めてやろうとするサンに、「あの世でドギムたちが待っていてくれるから一人ではない」と言い返えされてしまう。

サンの純愛はシスターフッドに最後まで勝てなかった。

これこそが本作のロマンスが他の作品と一線を画したところ。昨今、女性の友情や連帯感をテーマにした韓国ドラマが人気だが、本作が時代劇ファンだけでなく、これまで時代劇に見向きもしなかったファンまでを「赤い袖先」沼に引きずり込んだ理由かここにあるのかもしれない。

さあ、そんなサンがドラマのラストでどんなシーンを見るのか?

【「赤い袖先」を2倍楽しむ】では、時代背景や実在人物の紹介、ネタバレあらすじなどまとめている。
「赤い袖先」とドラマ「イ・サン」を徹底比較したコラムもある。
 ①作品&名前編:ヒロインの名前が違うのはなぜ?
 ②友情編:生涯の友から視聴者を号泣させた友情まで
 ③ロマンス編:ヒロインが側室になるのを拒んだ理由は?

これまでの史劇ロマンスと全く違うアプローチで描かれた物語を、俳優イ・ジュノとイ・セヨンが完璧に具現化した「赤い袖先」は、U-NEXTで独占見放題配信、Blu-ray&DVDも好評発売中だ。

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kandoratop【作品詳細】【「赤い袖先」を2倍楽しむ】