【韓ドラコラム】「赤い袖先」と「イ・サン」を比べてみた③ロマンス編:ヒロインが側室になるのを拒んだ理由は?

2023年05月16日15時02分ドラマ
「赤い袖先」©2021MBC / 「イ・サン」©2007-8 MBC

明日5月17日からテレビ東京にてイ・ビョンフン監督の大ヒット時代劇「イ・サン」が久々の再放送となるが、イ・ソジンが演じた主人公は朝鮮時代の名君・正祖で、2PMのジュノが「赤い袖先」で演じている。時代も主人公も同じ2作のどこが違うのか?第3弾は「ロマンス」に注目し、2人の出会いから最期の時を迎えるまでを見てみよう。

「イ・サン」「赤い袖先」は18世紀後半、500年の王朝史においてもっとも波乱万丈、紆余曲折の人生を送った王であり、進んだ考えを持つ改革君主である朝鮮王朝第22代・正祖、イ・サンの物語。その劇的な人生や挫折、成功や後悔、輝かしい実績や切ない愛と友情をドラマチックに描いている。



以下、ロマンス編に入る前に①と②を先に目を通しておくことをお勧めします。
 ①作品&名前編:ヒロインの名前が違うのはなぜ?
 ②友情編:生涯の友から視聴者を号泣させた友情まで
※以下、最終回までのネタバレがあります。気になる方は視聴後にお読みくださいね。
両作品でヒロインの名前が(「イ・サン」ソンヨン(演:ハン・ジミン)=「赤い袖先」ドギム/ドクイム(演:イ・セヨン))と違っているので、以下“ヒロイン”と表記。

サンとヒロインは相思相愛。サンは側室なってほしいと伝えているが、両作品ともヒロインはそれを断っている。しかし、その理由が全く異なる。なぜ側室になるのを拒んだのか、出会いから見てみよう。

■サンとヒロイン(ソンヨン/ドギム)の出会い
共に幼い頃のサンが祖父である王、英祖に禁じられている行動を起こしたときにヒロインに出会った。「イ・サン」は謀反の疑いで米びつに入れられた父に会いに行ったとき、「赤い袖先」は亡くなった祖母の弔問に向かったとき。共にヒロインがピンチをサンを助けてくれた。

■再会
▼「イ・サン」
9年後、サンは政敵ばかりの宮中、孤立無援でわが身を守り、父の汚名を晴らそうとしている孤独に戦っている。ヒロインは1年前に都に戻り宮中行事の記録画などを残す図画署の下働き(茶母)となる(5話/77話)。清の使節団との会合の席で窮地のヒロインを助け、運命の再会を果たす。側近ホン・グギョン(「赤い袖先」のドクロ)が現れるのはもっと後(15話/77話)。

▼「赤い袖先」
ことさら偏屈者を強調し宮女たちからも恐れられている存在として描かれるサン。すでに側近ドクロと同志の仲間たちで組織された“同徳会”もあるが、亡き父の心の病に自分も関わっているとトラウマを抱えている。
※“同徳会”は実在組織で、史実では結成や命名はサンが正祖として即位した後とされている(5話/17話)。

■先に好きになったのはどっち?
▼「イ・サン」:ヒロイン
子供の頃、怪我をした腕に帯を巻いてくれたサンに淡い恋心を抱く。9年後の再会でさらにその思いが強くなり、それが恋だと気づくのが16話/77話。一方、サンにとってヒロインは幼い頃から変わらず友であり再会後は協力者。ヒロインが茶母(下働き)から図画署の画員になれるよう力を貸すなどピンチを救ってやるのも友情から(と本人は信じている)。

▼「赤い袖先」:サン
子供の頃、勇気づけてくれた宮女見習いとは知らず、騒がしく無礼を働くヒロインに腹を立て何かと意地悪をする。だが、サンが世孫と知ってからも言うべきことは我慢しない物怖じしないヒロインに惹かれていく。側近とヒロインの仲を誤解して不機嫌になり、沐浴の世話に入ってきたヒロインが浴槽に落ち、ずぶ濡れになってから、勉強も手に付かないほどヒロインが気になる(第7話/17話)。

■恋のキューピット
▼「イ・サン」:テスとサンの妻ヒョイ
幼い頃、ヒロインと共に出会った親友テスがキューピット。再会後にサンの護衛兵となり、命がけでサンを守る。ヒロインに側室になれる機会が訪れると、それを勧め、ヒロインのサンを慕う恋心をサンに伝えるのもテス。だが、実はテスもまたヒロインを一途に想っていた。
もう一人、夫サンより先に夫の恋心に気づいた妻ヒョイ。子が授からない世孫嬪であるヒョイは新たな側室選びの時に、サンが心を寄せているヒロインを推す。まるで聖女のような女性だが、ヒロインの清(中国)行きのエピソードでは嫉妬に近い切ない思いも描かれる(31話/77話)。その後もヒロインに格別目を配り、本作では描かれないヒロインの唯一の女友達の立ち位置とも考えられる。

▼「赤い袖先」:なし
「イ・サン」と違って、こちらのサンは積極的。キューピットなしに自身の気持ちに気づくや折に触れてヒロインに猛プッシュ。だが、あえて挙げるなら…少女時代からヒロインをサンの側室にしたいと願っていた提調尚宮チョ氏。もっともそれは純粋にヒロインを推すものではなく、自身の野望のため(3話/17話)。また、「イ・サン」ではヒロインを嫌っていたサンの母・恵慶宮が、こちらでは母として息子の恋心を応援する優しい味方として描かれる。

■告白
▼「イ・サン」:サン
友情だと思っていたヒロインに対するサンの気持ちに異変があったのは、ヒロインが清に派遣され10年も会えないと知った時。政務が手に付かないほど動揺する。そしてヒロインが満身創痍になり清から戻ってきたときには、政務を放り出して傍で見守り続け、やっとそれが友情ではなく愛情だと気づく。だが、サンは世孫という立場から涙をのんで想いを封印し、ソンヨンには自由な暮らしをさせてやってほしいと母に頼む36話/77話)。サンと引き離そうとした母・恵慶宮の計画が裏目に出た瞬間だ。
その後、テスからヒロインの自分への想いを聞かされ、またヒロインが幼い時に怪我した腕に撒いてやったサンの帯を今も大事に持っているのを知り、やっと告白。花びら舞い散る木の下でヒロインがサンの愛をやっと受け入れるのはなんと62話/77話。この回でサンはヒロインを寝所に呼ぶがそれは母を諦めさせるためのパフォーマンス。2人が結ばれるのは婚礼後。だが、この時、ヒロインはやっとテスの想いを手紙で知ることに。

▼「赤い袖先」:サン
沐浴以降、ヒロインへの思いが膨らむ一方のサンは、宮女たちの「女子トーク」でヒロインが宮女一の人気の側近ではなく、自分を慕っていると盗み聞きし大喜び。当時貴重なミカンをプレゼントしたりするも、そっけなくあしらわれる。そんな世孫に対してあり得ない態度に驚きながらもますます惹かれていくサン。そしてヒロインが見知らぬ男と親し気な様子に嫉妬し、ついに書庫で告白。また幼い頃出会って宮女がヒロインだと分かり、ボルテージは急上昇!これらが全て7-8話/17話というスピード展開。その後も事あるごとに自分を助けてくれるヒロインに想いが募る。そして側近の裏切りを知った後、ついに強引に口づけをする(14話)。その後、一度はヒロインを諦め、遠ざけるが、少年サン最大のピンチの禁書の一件(1話/17話)も、助けてくれたのが側近ではなくヒロインと知ると、強引に寝所にヒロインを呼ぶ。そして最後の告白でやっとヒロインはサンの愛を受け入れる(15話/17話)。

■ヒロインが側室になるのを拒んだ理由
「イ・サン」
ヒロインはサンの助力もあって朝鮮で初めての図画署の画員となれた。そんなヒロインに側室になれるチャンスが舞い込む。一度は清への派遣(36話/77話)で側室になることを断る。もう一度はサンが王になってから。サンの肖像画を描くという大役が舞い込んだ時。大役を引き受けると側室にはなれない。仕事を取るか愛を取るか(51話/77話)…サンはヒロインが側室より画員の道を選んだと思っていたが、実はすべてがサンの母に脅されたからだった。

「赤い袖先」
ヒロインも沐浴騒ぎ以降、サンへの想いが膨らむが「宮中での争いに人生を狂わされるのはまっぴらごめん!宮女仲間たちと楽しい宮中ライフを満喫したい!」との思いの方か強い。何度もサンから求愛されるも、自分の想いを徹底的に封印し、側室になることを拒んだ。

■永遠の別れ
▼「イ・サン」
やっとヒロインを側室に迎えた後も、善政のための改革を次々と推し進めるサン。ヒロインは待望の男児を出産し、世子に冊封されれるが、はしかで急死。嘆き悲しむヒロインだが身ごもっている2人目のために気丈にふるまうも、病魔がヒロインを襲う。口止めされていたテスがサンにヒロインの病状を知らせ、サンは遠く清(中国)まで治療薬を探させるが、結局間に合わず、最後に力を振り絞ってサンの似顔絵を描くヒロインが、風に飛ばされた思い出の帯を探しているときに倒れ、駆けつけたサンの腕の中で「悲しんだり苦しんだりしないでほしい」と言い遺し命果てる(74話/77話)。サンは約束通り、聖君として政務に励み、最大の政敵も排除する。だが過酷な政務を続けていたサンはついに倒れ、死の淵で自分に会いに来たヒロインに力をもらい、最後の力を振り絞り政務に当たり、永遠の眠りについた後、側室が生んだ世子をテスが見守る(77話/77話)。

▼「赤い袖先」
想い人の側室になれたヒロインは、すっかり甘えん坊になったサンに優しく接したり、自分の傍から離れないサンを政務に戻るよう叱咤激励したり。だがその一方で、宮女仲間たちとの気軽な付き合いを事あるごとに思い出し、悲しむ(16話/17話)。その後、「イ・サン」同様、世子に冊封された息子がはしかで急死し、2人目を身ごもるヒロインは我が子の最期も看取れない。そんなわが身を嘆き悲しむ。さらに、宮女仲間の一人が武官と私通した罪で処罰されるが、立場上、その許しを王に請うこともできない。望まぬ“側室”という身分にしたサンを恨み、最期の時までサンではなく宮女仲間たちを呼んでほしいと頼み、とうとう「愛している」という言葉を言わず、「来世で会っても見なかったふりをして欲しい、来世では自分の望んだ通りに生きてみたい」と言い遺して命を終える。時が過ぎ病に倒れたサンは、ヒロインと夢で逢い「愛してほしい」と頼み、身分から解き放たれた二人は口づけを交わし微笑む(17話/17話)。

時代もメインキャストも同じ。だがそこで描かれたロマンスは大いに違う。これは作品が誰の目線で描かれたかが重要なポイントとなっている。これについてはまた、別の機会で。

両作品ともDVD発売、レンタル中だ。2022年11月現在、「赤い袖先」はWOWOWなどで、「イ・サン」はテレビ愛知などで放送中。詳しくは以下の【2倍楽しむ】で。ここでは各話のネタバレあり/なしあらすじと見どころ、歴史背景、予告動画などもまとめて紹介している。

kandoratop

【作品詳細】【「イ・サン」を2倍楽しむ】

「イ・サン」公式サイト

【作品詳細】【「赤い袖先」を2倍楽しむ】

「赤い袖先」公式サイト