2000年以降、韓国週末ドラマ枠でSBSが優勢に MBC低迷の背景と今後の展望(考察)

下段:MBC「赤い袖先」「恋人」、JTBC「夫婦の世界」、tvN「愛の不時着」
韓国のドラマファンにとって、週末夜の地上波ドラマは特別な時間だ。特にMBCとSBSは、長年にわたり週末ミニシリーズ枠でし烈な争いを続けてきた。しかし2000年以降、視聴率・話題性の両面でSBSが優位に立っている。
MBCも輝きを放ったヒット作
MBCは2000年代以降、数々のヒット作を生み出してきた。
たとえば「赤い袖先」(2021-2022年)は、初回視聴率5.7%から最終回で17.4%まで上昇(ニールセンコリア調べ)。主演ジュノ(2PM)とイ・セヨンの好演、重厚なストーリーが高く評価され、累計2400万ビューを超える大ヒットとなった。
また、ナムグン・ミン主演のロマンス時代劇「恋人~あの日聞いた花の咲く音~」(2023年)は、最高視聴率12.9%を記録し、週末ドラマの代表作となった。さらに2000年代初期には、「ホジュン」「トンイ」「チャングムの誓い 宮廷医官への道」といった社会現象級の作品を次々と生み出し、"ドラマ王国"と称された栄光もある。
2024年前半には、イ・ハニ主演のロマンティック・コメディ時代劇「夜に咲く花」が登場。初回7.9%から最終回18.4%(MBC金土ドラマ枠歴代最高視聴率)と大きく伸びた。「捜査班長1958」も初回10.1%、最高10.8%と好調で、MBCは確かな存在感を見せ、SBSがやや劣勢だった。
MBCの人気低迷、複合的な要因
しかし2024年後半に入ってから週末ミニシリーズ枠全体ではMBCは苦戦が続く。その理由は一つではない。
▼OTT(配信サービス)との競争激化
NetflixやDisney+、TVINGなど自由度の高い作品が若年層・グローバル層を取り込み、地上波局の視聴者離れが加速した。
▼制作費高騰と広告収入減少
俳優・作家のギャラ高騰に対して、1ケタ台視聴率が増えた結果、広告収入が追いつかず、赤字体質に陥る局面も見られた。
▼ドラマ供給過多とマンネリ化
地上波・ケーブル・OTT合わせて作品数が急増し、似た設定やリメイクが増え、視聴者の興味を引きづらくなった。
▼編成縮小と放送時間の変動
バラエティやドキュメンタリーへの枠移動により、ドラマファンの視聴習慣が乱れた。
これらが複合的に作用し、人気低迷を招いている。
SBSが強い理由
一方、SBSの週末ドラマは安定して好調だ。
「鬼宮」(2025年春)は初回9.2%(全国)・9.3%(首都圏)スタート、その後も9~10%台の高視聴率を維持。「埋もれた心」(2024年)は最終回で全国15.4%、首都圏も15.7%、「わたしの完璧な秘書」(2024年)も12%超えのヒットを記録した(すべてニールセンコリア調べ)。
SBSが強さを保つ理由は以下の通りだ。
▼ジャンルの多様化:ファンタジー、ロマンス、サスペンス、時代劇など幅広い作品を投入
▼話題性を意識したキャスティング:人気俳優やアイドル出身キャストを積極起用
▼グローバル展開の意識:SNS戦略や海外配信を視野に入れた企画づくり
こうした戦略が功を奏し、幅広い世代の視聴者を惹きつけている。
他局・業界全体の動き
なお、近年はKBSの週末家族ドラマや、tvN・JTBCなどケーブル局のオリジナル作品も高視聴率・高話題性を記録しており、地上波3局の競争はかつてほど一強ではない。特にtvN「愛の不時着」や「涙の女王」、JTBC「夫婦の世界」などは20%超の視聴率を叩き出し、韓国ドラマ市場全体の多様化が進んでいる。
まとめ
2000年以降の韓国地上波週末ミニシリーズ枠では、SBSが視聴率・話題性ともにMBCをリードしてきた。多様なジャンル展開、キャスティング戦略、グローバル志向が現在の地位を築いている。一方で、MBCも時代劇やロマンス分野では独自の強みを発揮し、「赤い袖先」「恋人」「夜に咲く花」「捜査班長1958」など今なおヒット作を生み出し続けている。
OTT競争や制作環境の変化にどう適応していくか。両局、そして韓国ドラマ業界全体の今後に注目したい。
※視聴率はニールセンコリア、作品情報は各局公式サイト・報道資料等を参考に作成した。
navicon韓流コーナー(韓国ドラマ2025年4月現在1500作品の紹介、ドラマの深掘りする【2倍シリーズ】、時代劇に役立つ【年表・王朝系図・地図】など図表などまとめています⇒