【韓ドラ歴史コラム】史実に一度だけ登場する道化師“コンギル”、「暴君のシェフ」で新たに蘇る

18時00分ドラマ
画像:이주안Instagramより

歴史にほんのわずか記録された人物が、現代の舞台や映画、ドラマで繰り返し呼び起こされることがある。「暴君のシェフ」登場した“コンギル(공길/孔吉)”もその一人だ。

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【暴君のシェフ】(全12話)韓国ドラマ紹介「暴君のシェフ」は、現代から過去へタイムスリップした天才シェフが、絶対的な味覚を持つ王と出会い、王宮で繰り広げられる波乱のストーリーを描いたサバイバル・ファンタジー・ラブコメディ。

これまで紹介した、公式情報やエピソードから推測される実在人物のモデルは以下である。

化けの皮をはいだチェサン大君のモデルは斉安大君?
チャン・チュンセン、あの天才科学者チャン・ヨンシル(蒋英実)の子孫?
インジュ大王大妃(ソ・イスク)のモデルは“鉄の女”仁粋大妃
イム・ユナ(少女時代)が選に漏れた“採紅”って何?
カン・ハンナ演じる側室は、三大悪女の張緑水(チャン・ノクス)?
時代背景は?イ・チェミンが演じる王のモデルは燕山君


■コンギル(공길/孔吉)生没年不詳


朝鮮時代い暴君と呼ばれた第10代王・燕山君(ヨンサングン)時代の道化師で、史書『朝鮮王朝実録』に一度だけ登場する人物である。

燕山君の宮中で老儒者(年をとっていて学識の高い儒者)をまね、笑いを誘っていた道化師だった。しかしある日「王は王らしく、臣は臣らしく」という『論語』の一節を引用してしまう。王の逆鱗に触れ、鞭打たれた末に流刑となり、以後歴史の表舞台から姿を消した。

たった一言で運命が変わったとも言えるこの事件は、意図的な風刺だったのか、偶然の失言だったのかは不明。しかし、当時軽んじられていた道化師が暴君の前で風刺した珍しいケースとして、後世の創作の題材となり、大衆メディアでは想像を交えたキャラクターとして蘇ることになった。


■メディアが作り出したコンギルのイメージ


2000年の舞台『爾(イ)』、そして2005年に公開された映画『王の男』では、美少年芸人として観客を魅了するキャラクターに再構築された。特に映画は1000万人を動員する大ヒットとなり、主演のイ・ジュンギが演じたコンギル像が今日まで強い印象を残している。その後も演劇公演で再演を重ね、韓国エンタメ史における象徴的キャラクターとなった。

映画タイトルの「男」はまさにコンギルを指している。劇中で彼は、カム・ウソンが演じる同じく道化師の仲間であるチャンセン、そしてチョン・ジニョンが演じる王・燕山君さえも魅了するほどの美少年として描かれている。その美貌は燕山君の狂気と愛情欠乏を刺激し、物語の悲劇を導く中心人物となる。


■「暴君のシェフ」に登場するコンギルは?

コンギル画像:이주안Instagramより
そして2025年、Netflixで配信中の「暴君のシェフ」にも新しい“コンギル”が登場した。第3話の初登場で王から名前を聞いてヨジンがすぐに『王の男』のコンギルだと気づいていた。

映画や演劇では「女性よりも美しい」というコンギル。イ・ジュアンが演じるコンギルは、王イ・ホン(イ・チェミン)の秘密工作員として登場し、眉目秀麗ではあるが髭を生やしより男性的。当初は王を仇と思い込み復讐を胸に暗躍するが、やがて真実を知り真の忠臣へと変化していく。陽気にジョークを飛ばす一方で命懸けで仲間を守る姿は、過去の作品で描かれてきた“美しく儚い芸人”とはまるで異なる。ひとりの若手俳優の手によって、新たな命を与えられたキャラクターだ。

「暴君のシェフ」イ・ジュアン、繊細かつ力強い演技でドラマの核心に迫る—コンギル役で魅せた存在感


■コンギルが登場する他のドラマ

(作品タイトル青文字クリックで作品詳細ページへ遷移)
映画『王の男』(2005年)配役:イ・ジュンギ
演劇『爾』(イ)(2000年、2001年、2003年、2006年)配役:オ・マンソク
演劇『爾』(イ)(2010年)配役:チョン・テウ
 ほか

「暴君のシェフ」はNetflixにて全話独占配信中だ。【「暴君のシェフ」を2倍楽しむ】では、全話あらすじと見どころ、キャスト徹底紹介、時代背景や豆知識など、ドラマを深掘りしている。

kandoratop【作品詳細】【「暴君のシェフ」を2倍楽しむ】