【韓ドラ歴史コラム】「濁流」時代背景:混迷と腐敗に揺れ動く第14代王・宣祖時代

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ロウン×シン・イェウン×パク・ソハム主演のDisney+(ディズニープラス)オリジナル時代劇「濁流(탁류)」は、朝鮮王朝14代王・宣祖(1567〜1608年)の治世を背景に、人々の夢と生き様を描くアクション大作である。実在の人物を扱うわけではないが、当時の時代相と文化相をリアルに再現した正統派時代劇だ。
※第3話で、9年前として1583年の「尼蕩介(ニタンゲ)の乱」が描かれたことから、ドラマの舞台と宣祖の治世後半と特定した。
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「濁流」は、朝鮮の金と物資が集まる京江(現在の漢江一帯)。混沌とした世を覆そうとする人々が、それぞれ異なる理想を胸に抱き、濁流のごとき運命に飲み込まれていく姿を描く。
宣祖の即位と不安定な王権
宣祖は李氏朝鮮で初めて傍系から即位した国王であり、その出自は常に正統性を問われた。即位当初は儒学者を登用し政治刷新を図ったものの、党派間の深刻な対立に阻まれ、王権は不安定さを増していった。
※もっと詳しく知りたい方は➡【第14代王・宣祖は都を捨てた情けない王なのか?】

東人・西人の党争と腐敗
政界は東人派と西人派に分かれ、朱子学解釈の相違や両班の利害対立を背景に激しく争った。1584年の李珥の死後、党争は一層激化し、朝廷の意思決定は停滞。やがて姦臣が権勢を振るい、腐敗した役人が蔓延するなど、政治の荒廃が深刻化した。人々の生活は困窮した
※朝鮮の党派について詳しくは➡【朝鮮時代の党派の歴史】で図解。

尼蕩介の乱と北方の脅威
ドラマ第3話少年シユル(イ・ジュウォン/ロウンの子役)が目の当たりにした1583年の「尼蕩介(ニタンゲ)の乱」は、女真族(後の清の主体民族)が北辺を侵攻した大規模な軍事事件である。この出来事は朝鮮の防衛の脆弱さを露呈し、その後も北方の脅威は続いた。
※その後の北方の朝鮮侵攻について➡【丙子の乱って?】

壬辰倭乱前夜の外交と軍備
さらに「濁流」の舞台となる宣祖期の後半は、豊臣秀吉による明侵攻計画が迫り、朝鮮半島への侵略が現実味を帯びていた。だが党派争いに翻弄された朝廷は防備を整えることができず、軍備強化は後手に回った。その結果、1592年の壬辰倭乱では日本軍の上陸を容易に許すこととなった。
※壬辰倭乱(丁酉再乱/文禄・慶長の役)について詳しく知りたい方は➡【屈辱の王・仁祖と朝鮮王朝中期を考える】
宣祖の避難と王権への影響
戦乱が始まると宣祖は首都・漢陽(現ソウル)を捨て北方へ避難した。この行動は「国を捨てた王」と批判を浴びたが、同時に明との協力を維持し朝鮮の再建に尽力した。戦後も党争は続き、政治の混迷は収束しなかった。

「濁流」が描き出すもの
「濁流」は、このように内憂外患に揺れた宣祖期を背景に、人々が理想と現実の間でもがきながら選び取る生き様を描き出す。濁流に飲まれるかのような時代のうねりは、作品をただの時代劇にとどめず、時代に翻弄される人間ドラマとして輝かせている。
「濁流」と同時代を描いたドラマ
同じ宣祖時代を舞台とする作品には「ホジュン 宮廷医官への道」「華政(ファジョン)」「不滅の李舜臣」「軍師リュ・ソンリョン~懲毖録<ジンビロク>」などがある。「濁流」はまだ結末に至っていないが、やがて朝鮮王朝の混迷を象徴する光海君や仁祖の時代へとつながっていく可能性もある。
※朝鮮時代のドラマについては➡【ドラマの年表:朝鮮王朝時代】を参照。
「濁流」は9月26日よりディズニー+で独占配信開始。初回は第1〜3話が一挙公開され、その後は毎週2話ずつ更新。全9話で展開される。
【「濁流」を2倍楽しむ】では、キャスト・キャラクター徹底紹介、制作発表会レポートまとめ、全話あらすじと見どころ、時代背景や豆知識など、ドラマを深掘りしていく。
「濁流」は9月26日からディズニー+で独占配信開始。初回は第1~3話を一挙公開し、その後は毎週2話ずつ更新され、全9話で展開される。
◇韓国ドラマ『濁流』|本予告
