ナム・ジヒョンという多面体―「愛する盗賊様よ」で証明された圧倒的演技スペクトラム

13時10分ドラマ
画像:KBS DRAMA公式X「은애하는 도적님아」より

KBS2土日ドラマ「愛する盗賊様よ」(은애하는 도적님아)で、ナム・ジヒョンが圧倒的な存在感を放っている。時代劇、ロマンティックコメディ、アクション、さらには魂の入れ替わりという大胆な設定までを内包する本作において、彼女は物語の重心を一切揺るがすことなく支え続けている。本作はU-NEXTで独占配信中だ。

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「愛する盗賊様よ」(脚本:イ・ソン、演出:ハム・ヨンゴル)は、ひょんなことから天下一の大泥棒になってしまった女性ホン・ウンジョ(ナム・ジヒョン)と、彼女を追っていた大君イ・ヨル(ムン・サンミン)の魂が入れ替わることで、互いを救い、民を守っていく危険で壮大なロマンスを描く。

ナム・ジヒョンが演じるのは、医女として生きる一方、夜には義賊“キルドン”として活動するホン・ウンジョという人物だ。相反する二つの顔を持つキャラクターは、設定だけを見れば破綻しかねない。しかし彼女は、これまで積み重ねてきたジャンル経験を土台に、日常と非日常、優しさと鋭さを自然に行き来し、人物像に確かな説得力を与えている。

トウォル大君イ・ヨル(ムン・サンミン)とのロマンスも、本作の大きな軸だ。胸をときめかせる軽やかな掛け合いから、想いを押し殺す切なさまで、感情の振れ幅を丁寧に積み上げていく演技は、視聴者の没入感を高めていく。そこに夜の義賊としてのアクションが重なり、ホン・ウンジョという人物はより立体的に立ち上がっていく。

物語が大きく動くのは、ウンジョとイ・ヨルの魂が入れ替わる展開だ。ナム・ジヒョンは、以前、数十回にわたるリーディングを重ねて互いの演技を共有したと明かしていた通り、相手役の癖や声のトーン、セリフのリズムまでを繊細に取り込み、“入れ替わり”を単なる仕掛けに終わらせない。感情の主体がどこにあるのかを明確に示す演技の変化は、物語の説得力を一段引き上げている。 



特に印象的なのは、第9話ラストから第10話にかけて父の死をきっかけに見せる感情の崩壊だ。明るく温かな人物だったウンジョが、世界を失ったかのように崩れ落ち、怒りに身を委ねていく過程は、観る者の胸を強く締めつける。復讐心に突き動かされ矢を放つ瞬間、そして立ちはだかる人物たちと対峙する場面では、内側で渦巻く感情を一切取り繕うことなく吐き出し、キャラクターの深層をさらけ出した。

こうした表現の裏には、細部への徹底したこだわりがある。ナム・ジヒョンは現場で監督と密に意見を交わし、わずかな動きや視線、タイミングまで分析しながらシーンを構築していったという。その積み重ねが、ホン・ウンジョという人物の人生を確かなものとして視聴者の前に提示している。

複合ジャンルが交錯する「愛する盗賊様よ」において、ナム・ジヒョンは単なる主演を超え、物語そのものを前進させる推進力となっている。彼女が積み上げた感情の軌跡は、視聴者の心に深い余韻を残し、次なる展開への期待を自然と高めていく。

物語が佳境へと向かう中、ホン・ウンジョというキャラクターがどの選択をし、どんな表情を見せるのか。その答えを見届けたいと思わせる力こそが、今作におけるナム・ジヒョン最大の魅力だ。

なお、第10話のラストでは、絶体絶命の瞬間の中でホン・ウンジョとイ・ヨル、二人の魂が再び入れ替わり、今後の展開への期待が高まっている「愛する盗賊様よ」は、毎週土・日曜21時20分よりKBS2で放送中だ。

これまでの全話のあらすじと見どころ、時代背景やキャストや韓国での評判などは【「愛する盗賊様よ」を2倍楽しむ】でまとめている。