「医心伝心」時代背景:朝鮮中期はどんな時代?第14代王・宣祖は都を捨てた情けない王なのか?宣祖(考)
キム・ナムギル主演「医心伝心~脈あり!恋愛!」にも登場する宣祖(ソンジョ)は朝鮮王朝第14代王で、名医ホ・ジュンが登場する作品には必ず描かれる国王!しかしその人物描写はどれも「都を捨てた」「我が子(光海君)に嫉妬」「優柔不断」など酷いもの…果たして本当にそうだったのか?今回は朝鮮中期と宣祖について考えてみた!ドラマ予告動画は公式サイトで公開されている。
「医心伝心~脈あり!恋愛!」は、朝鮮時代から時空を超えて現代のソウルにやってきた鍼灸医(キム・ナムギル)と、現代医学を信じる外科医(キム・アジュン)との400年を超えて繰り広げるタイムスリップメディカルラブロマンス。
【「医心伝心(原題:名不虚伝)」を2倍楽しむ】にはドラマ詳細と各話のあらすじと見どころ、豆知識などをまとめている。ホ・イムについてはコチラで詳しく解説している。
※以下、宣祖が登場するドラマも一緒にご紹介。(茶色)はドラマで描かれているエピソード。(青文字)クリックで年表や歴代王の紹介ページなどにジャンプ。同じ時代を描いた作品は【ドラマの年表:朝鮮王朝】で確認できまる。
■朝鮮中期は政争と戦乱の時代
朝鮮時代は高麗の武将・李成桂が1392年に高麗を倒して王位に就き、朝鮮王朝を誕生させ1910年まで500年以上続いた。(参:【韓国歴史年表】)
建国当初から後継者問題で政争が起きたが、儒教理念と親明政策によって国家基盤が固められた。特に4代王・世宗のハングル制定や天文器具の開発など文化面でも大きく発展した。
ところが、16世紀から17世紀にかけての中期では、朝廷は政権をめぐる党派の争いが日常化し、その隙をついて外敵(日本や清)からの攻撃を受け、政争と戦乱で国土は荒廃していく。
(「医心伝心」でキム・ナムギル扮するホ・イムはそんな王朝中期、14代王・宣祖が治める朝鮮から現代にタイムスリップして来たのだ)
■河城君(1552年生~1608年没)
宣祖は11代・中宗と側室の子である徳興君の三男で王子時代の名は河城君(ハンソングン)。
「オクニョ」©MBC13代・明宗が死に、直系の後継者(嫡男・嫡孫)がいなかったために、明宗が目をかけていた河城君が王となった。王朝では初めて直系でなく傍系(側室の家系)王が誕生した。
(「オクニョ 運命の女(ひと)」でも明宗が義兄・徳興君を頼りにして、その三男である河城君を可愛がるエピソードが描かれる。これについては「徳興君紹介」で詳しく解説)
■14代・宣祖(在位1567年-1608年)
宣祖は儒教奨励に注力し、朝廷を牛耳っていた勲旧派を退けて士林派の官僚を登用していく。ところが士林派が増えると分裂し新たな党争が始まる。(参:【党派の歴史年表】。この表で勲旧派と士林派についても説明している)
「王の顔」Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2014 The King’s Face SPC. All rights reservedそんな中、日本(豊臣秀吉)が2度にわたって侵略に乗り出してきた。(1592年「壬辰倭乱(イムジンウェラン、文禄の役)」、1597年「丁酉倭乱(チョンユウェラン、慶長の役)」)
政務そっちのけで党争を繰り返していた朝鮮は大混乱に陥り、宣祖は都・漢陽(ハニャン)を捨てて中国(明)国境近くまで逃げた。その時都を守るために奮闘したのが光海君と民兵だった。
(「医心伝心」(8話)で王が都を捨てるといって大騒ぎする様子が描かれるが、「王の女」(1-5話)や「王の顔」(11-15話)あたりで倭軍襲来に慌てふためき都を捨てるエピソードが描かれている)
「医心伝心」 (C)STUDIO DRAGON CORPORATION 7年続いた戦争は秀吉の死で終った。都を捨てるという逃げ恥をさらした宣祖だったが、戦乱による被害を復旧しようと全力を注いだ。民心を落ち着かせるために自らも食物や衣服を節制し、農地開墾などで民間の経済立て直しにかかり、朝鮮の民にあう医療の発展のため『東医宝鑑』の編纂も命じた。また愛国心を育てようと、身分を問わず戦功をたてた者には賞を与えた。これによって身分制度も崩れてきた。
「魔女宝鑑」(C) JTBC co.,Ltd all rights reservedしかし度重なる凶作により経済の立て直しが出来ず、朝廷の党争も激化する一方で臣下たちに振り回され、戦禍の後始末をできないまま宣祖は56歳でこの世を去った。
(『東医宝鑑』の編纂を命じられたのは「医心伝心」にも登場するホ・ジュンだ。これについてはこちらで詳しく解説している。
「魔女宝鑑~ホジュン、若き日の恋~」では宣祖は7話以降登場するが、「傍系だから臣下たちが王である自分を軽んじている」と、猜疑心の塊となり、妖術を悪用する黒巫女に魂を売ってしまう情けない王として描かれている。ちなみにこのドラマで若いホ・ジュンは黒巫女と戦うためにヒロインと共に薬作りする)
■宣祖(考):理想に燃えた先見の明のある王?
多くのドラマなどで宣祖は壬辰倭乱を防げず、都を捨てて逃げたことで優柔不断な王として描かれているが、実際には前王・明宗時代の難局を収拾し、長く続いた外戚政治(姻戚勢力の独裁)を終わらせた。
彼が目指した党派による政治は朝廷を混乱させ、外敵に隙を見せてしまったが、16代・仁祖の時代には西人と南人の2つの大きな党派による朋党政治という形態ができた。結局それも分派を繰り返し(参:【党派の年表】)、ついには安東金氏による勢道政治を許してしまったが、臣権中心の政治は近代的な議会政治につながる政治形態。これを400年も前に具現化した宣祖は優れた王だといってもいいだろう。
また、宣祖が編纂を命じた『東医宝鑑』が、400年以上たった今も本家・漢方医学の基本教材として広く使われていることを考慮しても、宣祖に先を見通す目があったのは間違いない。(韓法医学と『東医宝鑑』について詳しくはこちらで解説)
「王の女」
© SBS
Productions Inc. さらに、「王の女」などドラマで必ず描かれる光海君との確執。すでに世子となっていた光海君を廃してまで若い継妃(仁穆王后・金氏)が産んだ永昌大君を世子にしようとしたが、これも自分が傍系だということで苦労したから、次王はなんとしても王妃の産んだ嫡男にしたかったのだ。側室の息子でしかも次男の光海君としてはやってられない話だが…。ちなみに永昌大君は宣祖が54歳の時の子供で、ドラマでは若い王妃に腑抜けにされた老王として描かれているが、最初の王妃とは子供が授からなかったのだから、当時としては仕方がない。
(考)では筆者の勝手な憶測も交えているが、時代劇は実在の人物が登場することが多く、歴史に記された事象もエピソードとして描かれるだけに、史実と照らし合わせたり、逆に史実に疑問を持ったりできるのが時代劇の醍醐味だ。
【韓流コーナー】には、時代を知るための【年表・図表】、時代別の【地図】、歴史の解説や実在の王の紹介、ドラマ視聴に役立つ用語解説など【豆知識】などがあるので、これを参考に韓ドラ時代劇をどうぞ深読みしてはいかがだろう?
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(C)STUDIO DRAGON CORPORATION
◇KNTV「医心伝心」番組サイト
2018.06.12スタート 毎・火20:50~23:15 2話連続放送ほか
◇作品公式サイト