チョン・イル主演「ヘチ 王座への道」エピソード0:ドラマ前史と老論派・少論派・南人派を解説!
11月10日より、NHKBSプレミアム・海外ドラマ枠(日曜よる9時~)にて韓国ドラマ「ヘチ 王座への道」がスタートするが、本格時代劇とあって第1話から史劇ファンにはたまらない展開!史劇初心者やドラマを2倍楽しむために、エピソード0としてドラマの前史と、劇中何度も登場する老論派、少論派、南人派の3つの党派について駆け足でご紹介、予告動画はYoutubeにて公開している。但し、日本語字幕なし。
「ヘチ 王座への道」は、民のための政治を行い名君と伝わる朝鮮王朝第21代王・英祖(ヨンジョ)の青年時代を仮想の人物として描いた作品。
※以下、太文字をクリックするとそれぞれのもっと詳しい解説にジャンプできます
■ドラマが始まるのはこんな時代
拡大する朝鮮王朝(1392~1910)は、高麗の武将・李成桂が建国。太祖から純宗まで27人の国王がいる。ドラマの舞台となったのは第19代王・粛宗末期~第21代王・英祖青年期。
「イ・サン」「トンイ」の脚本家(キム・イヨン)の作品だけに、「トンイ」と「イ・サン」をつなぐ作品と考えればいいだろう。(同じ時代を背景した他のドラマは【ドラマの年表:朝鮮王朝】で確認できる)
王朝は『朝鮮経国典』を基本法典とし、政治理念は「儒教」。政治機構は、国王を頂点に最高官庁(議政府)と6つの中央官庁(六曹)で構成されていた。官僚は「両班」と呼ばれる支配層が科挙制度により選抜された(詳細は【朝鮮王朝豆知識】)。しかし、朝廷内では勢力争いが繰り返され、さらには日本軍の侵攻や二度にわたる後金(後の清)との戦争に敗れ、朝鮮は疲弊しきっていた。そんな中、15代王・光海君から19代王・粛宗にかけて土地の整備が行われ、農民の租税負担を軽減する「大同法」の全国実施で、農業技術が発達し、商工業も活性化し始めた。
これがドラマが始まる当時の朝鮮王朝の様子だ。
■老論(ノロン)派、少論(ソロン)派、南人(ナミン)派って?
ドラマの舞台である18世紀初頭は、老論派と少論派の二大党派(派閥)が朝廷の覇権を争っていた。では、この党派はいつ誕生したのか?
【党派の年表】を見てみよう。拡大する
朝鮮は、建国当初は建国功臣たちが王族との姻戚関係で「勲旧派」として勢力を伸ばしてきた。一方、地方地主の知識人たちはサークル(党派)を作り、やがて「士林派」として政界へ進出する。士林派は何度も粛清されたが、ついに政権を担うようになる。
ところが、16世紀になると士林派は分派を繰り返し、14代王・宣祖の時代には「西人派」と「東人派」が対立する。その後、東人から分派した「南人派」が勢力を伸ばし、粛宗の時代は西人と南人が対立。粛宗はこの2派をうまく政権交代(換局)させながら、民生の安定と経済の発展、そして王権を強化する。
両派がそれぞれ支持したのは…
・南人派⇒側室・禧嬪(ヒビン)張(チャン)氏
※一時は王妃になったが、側室に降格。世子・昀(ユン)の母
・西人派⇒仁顕王后(イニョンワンフ)閔(ミン)氏
※一時廃位されたが復位、子供なし
ところが今度は西人が「老論派」と「少論派」に分れる。そんな中、禧嬪張氏が仁顕王后を呪った罪に問われる。これを訴えたのは側室・淑嬪(スッピン)崔(チェ)氏。老論は死罪を主張し、少論が世子のことを考えて穏便に済ませるべきと反対する。だが結局、禧嬪張氏は死罪となる。
この時の3派の立場は…
・老論派⇒優位だが、世子(昀)が王位に就けば懲罰人事で劣勢になるかも…。
・少論派⇒劣勢だが、世子(昀)が王位に就けば形勢逆転も。
・南人派⇒多くが追放され朝廷での力を失う。
ドラマはこんな状況から始まる。但し、この後の展開は、インタビューで主演のチョン・イルが語ったように「脚本家が再解釈した部分も多く」史実とは大きく違う(チョン・イル、インタビュー映像)。冒頭で、「トンイ」と「イ・サン」をつなぐと紹介したが、史実を知る視聴者には戸惑うかもしれない。実際、韓国では一部の視聴者から、歴史的事実と異なる(実在する登場人物が多く出ているのにキャラクター設定やストーリーが異なる)ため「混乱する」といった声も聞かれ、否定的な意見もちらほらみられた(韓国での評判で詳しく解説)。
史実では老論は終始一貫して淑嬪崔氏の息子・延礽君(ヨニン君、後の英祖)を支持するが、果たしてドラマでは老論や少論は延礽君を支持するのか?それとも…。
ちなみにこの淑嬪崔氏こそがドラマ「トンイ」でハン・ヒョジュが演じたヒロイン。そして禧嬪張が朝鮮三大悪女の一人チャン・オクチョンだ。
※もっと詳しく党派の歴史を知りたい方はコチラ⇒英祖が恐れた党派、イ・サンが憎んだ党派とは(前半)/(後半)
【「ヘチ」を2倍楽しむ】では、ドラマの時代背景や見どころ、英祖(ヨンジョ)や朴文秀(パク・ムンス)といった実在の人物紹介などまとめている。また、韓国での評判やインタビュー動画も日本語解説入りで紹介しているので、ドラマ視聴の参考にどうぞ。
※次回は、ドラマの中で描かれる3人の国王について紹介する。
◇NHK「ヘチ 王座への道」番組サイト
2019.11.10スタート 毎・日21:00~22:00
◇Youtube|SBS NOW予告動画(日本語字幕なし)
【作品詳細】【「ヘチ」を2倍楽しむ】