「上陽賦~運命の王妃~」ダメンズたちの愛を考察:チャン・ツイィーはジャンヌダルクか?傾国の美女か?

2023年06月25日19時00分ドラマ
(c) 2021 China International Television Corporation

国際派映画女優のチャン・ツィイー初の連続ドラマ主演作である中国歴史スペクタクル「上陽賦~運命の王妃~」で、彼女が演じた主人公の王儇(王ケン)を愛した男たちについて考えてみた。ネタバレあり。

「上陽賦~運命の王妃~」は架空の古代中国を舞台に、不本意な政略結婚で結ばれた二人が、やがて心を通わせ互いに支え合うようになり、民のために戦う超本格歴史スペクタクル。架空の国・成(王朝)を時代設定や、押さえておくべき人物と各話のネタバレあらすじ、見どころ、豆知識、音楽(OST)、ロケ地などは【「上陽賦」を2倍楽しむ】でまとめている。



王ケンはジャンヌダルクか?傾国の美女か?


上陽賦チャン・ツィイー初の連続ドラマ主演の本作は、まさに「チャン・ツィイーのチャン・ツィイーによるチャン・ツィイーのため」の作品で、彼女の魅力がぎっしり詰まっていた。どの場面を切りとっても彼女は美しく、気高い。が、しかしである。1979年2月9日生、撮影当時すでに40歳を過ぎていた彼女の15歳という設定はさすがに無理があった。脇役たちもベテラン俳優が多く、豪華絢爛な舞台セットに比べて何とも地味な幕開け。頼みの綱の中堅実力派のイケメン俳優たちが演じる役も揃ってダメンズ…しかし5話で蕭キと結婚してからは年齢設定も気にならなくなり俄然面白くなってきた。
本作では王妃の身で、命を懸けて民を守ったり、夫の蕭キと共に敵を欺く計画で国を救ったり、まさに王ケンは「国を救ったジャンヌ・ダルク!」。だが一方で、彼女の外見・内面の美しさに心奪われ国政をダメにし身を滅ぼした男たちもいる。そんな彼らにとって王ケンは「傾国の美女」だったかもしれない。

ここからは5人の男たちがどのように王ケンを愛したのか振り返ってみよう。

ぶれない男、蕭キ


上陽賦登場する男たちがこれほどダメ揃いの作品はこれまでお目にかかったことがない。その中で唯一、初登場シーンから最終回まで素敵だったのは蕭キ、ただ一人。特に王ケンの窮地を救う登場シーンは神レベルのカッコよさで、まさに無敵の力を秘めた白馬の王子さま!どんな状況下でも民と仲間、そして何より王ケンを守るぶれない心で王ケンだけでなく視聴者のハートもがっちり掴んだ。演じたのは「長安二十四時」「少林問道」のジョウ・イーウェイ。チャン・ツィイーが彼の演技にほれ込み、彼との共演を望んで本作での共演が実現し、最高のケミストリーを見せてくれた。

ワイルドな賀蘭箴


上陽賦蕭キの最強の敵として立ちはだかったのが賀蘭箴(演:ユアン・ホン)。忽蘭の王子だ。その不幸な生い立ちから目にするもの全てを傷つける危険な男。だが王ケンを愛し始め、彼女に対する態度だけは変わっていく。6話1度目の拉致は蕭キへの復讐のためだが、34話のそれは違う。惚れ込んだ王ケンを助けるためだった。だがそんな想いは最後まで王ケンに届かず、37話ついには王ケンを守るために国も命も捨ててしまった。

マザコン馬子隆


上陽賦3話皇太子時代、王ケンを力づくでわが物にしようと奸計を巡らせ、廃位のピンチに立った馬子隆(演:クォ・ジャーミン)。それでも皇帝になってからは自覚も出てきて、間違いから妻にした皇后も愛し、蕭キを側近にして善政を敷こうとした。しかし結局、母である皇太后の言いなりになって自滅したマザコン皇帝。

権力に魅せられた宋懐恩


上陽賦蕭キの側近として、蕭キに代わって王ケンを傍で守ってきた宋懐恩(演:リウ・ドアンドアン)。それがいつしか上司の妻である王ケンに横恋慕…権力に取りつかれ、43話「蕭キが持つものは俺も手に入れ、蕭キが持てぬものも手に入れる」と王ケンに迫り強烈なビンタを喰らう。そればかりか結局は共に戦った仲間の槍で死に至った。

それでも賀蘭箴のワイルドな愛は魅力的だったし、皇帝になってからの子隆はそれなりに一生懸命で可愛かった。寒門(低い家柄)に生まれた懐恩が都でちやほやされて権力にとらわれていくのも理解できなくはない。王ケンを愛した男たちの中でもっとも情けないダメンズは間違いなく子澹だ。

大人になれなかった馬子澹


上陽賦容貌に優れ穏やかな性格だった馬子澹(演:トニー・ヤン)。王ケンと相思相愛だったが、ある事情から引き裂かれてしまう。でも王ケンと一緒になれるチャンスはあった。5話王ケンの母が駆け落ちのチャンスを作ってくれた。だが子澹は、馬氏への復讐と王ケンへの愛で迷った末にタイムアウト!母方の家門を背負っているだけに、ここまでは同情の余地はある。だが、王ケンが王族のおてんば娘から民を守る豫章王妃に成長したのに比べ、子澹はいつまでも世間知らずの少年のまま。その後も未練たらしく王ケンに付きまとい、ついに高潔だった自分を捨てて陰謀を巡らした末に皇帝の座に就く。だが皇帝になったのは民のためではなく、王ケンを手に入れるためで政治には全く関心がない。そんな彼のだらしなさが、王ケンの侍女だった蘇錦児の人生も狂わせた。

かろうじてエンディングで自ら退位する見せ場は作ったものの、先々代皇帝・馬曜(演:ジャン・カイ)、野心家・王藺(演:ユー・ホーウェイ)、馬子律(演:プーバージャ―)、ダメンズだらけの本作で子澹は間違いなくキング・オブ・ダメンズだろう。

天龍ep7「天龍八部 レジェンド・オブ・デスティニー」より
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そんな子澹を演じたのは台湾出身のトニー・ヤン。素顔の彼はがっしりとした体格のナイスガイ。日本のゲームを基にした『映画 真・三國無双』では三国志の英傑・劉備を演じている。また"武侠小説の帝王"金庸の最高傑作をドラマ化した「天龍八部 レジェンド・オブ・デスティニー」では丐幇一の勇士・喬峯をカッコよく演じている。この作品はBS11にて2023年5月11日からTV初放送中だ。

「上陽賦~運命の王妃~」をもう一度観たい方は、2023年6月現在Hulu、U-NEXTなどで全話配信中、DVDも好評発売中だ。

DVD公式サイト
NHK番組サイト
予告編

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