韓国時代劇は“魂チェンジ”がトレンド?「この川には月が流れる」完走、「愛する盗賊様よ」へ
同じ“魂入れ替わり”でも、描かれるのは「恋」か「革命」か――。
MBCで放送されたファンタジー時代劇ロマンス「この川には月が流れる」(이강에는 달이 흐른다)が、静かな余韻を残して放送を終えた。そして来年1月3日からは、KBS2で新たに「愛する盗賊様よ」(은애하는 도적님아)がスタートする。
一見すると別々の作品だが、この2作には明確な共通点がある。
それは、主人公カップルの“魂が入れ替わる”という設定だ。2010年ヒョンビン×ハ・ジウォンのSBS「シークレット・ガーデン」が大ヒットしたが、近年の韓国ドラマでは、現代劇に限らず時代劇でも「人格・魂の交換」という大胆な仕掛けが用いられるようになってきた。その流れを象徴するのが、まさにこの2作品だ。
■ MBC「この川には月が流れる」
「この川には月が流れる」は、身分も人生もまったく異なる男女が、魂の入れ替わりを通して互いの世界を生きるファンタジー時代劇だ。
笑顔を失った王世子(カン・テオ)と、過酷な運命を背負って生きる女性(キム・セジョン)。魂が入れ替わることで、王宮の重圧と市井の現実、双方の苦しみが可視化されていく。
単なるコメディ的ギミックにとどまらず、「冤罪で命を落とした世子嬪の記憶を取り戻す復讐とヒーリング要素」が胸を打つ。「もし相手の人生を本当に生きたら、人はどう変わるのか」というテーマを丁寧に描いた点が高く評価された。
演じ分けを要求される主演俳優たちの演技力も話題となり、終盤にかけては“魂の帰還”が意味するものに、多くの視聴者が感情を揺さぶられ、最終回視聴率6.8%で幕を閉じた。
■ KBS2「愛する盗賊様よ」
盗賊と大君――立場逆転が導く“恋と革命”
一方、来年1月から放送される「愛する盗賊様よ」もまた、魂の入れ替わりを物語の核に据えた時代劇ロマンスだ。
盗賊として生きる女性(ナム・ジヒョン)と、王族として守られてきた大君(ナム・サンミン)。本来なら決して交わることのない二人が、ある事件をきっかけに魂を入れ替え、それぞれの人生を背負うことになる。立場逆転で互いの痛みを理解し、民を守る成長物語が軸だ。
こちらの作品では、「身分制度の不条理、権力と民の距離、正義の在り方」といった社会的テーマがより前面に押し出される構成となっている。魂が入れ替わることで、盗賊は「支配する側」の現実を知り、王族は「奪われる側」の痛みを知る。
恋愛ロマンスでありながら、盗賊アクション満載のコミカルさ、時代劇ならではの緊張感と政治的要素が絡み合う点が注目ポイントだ。
■ なぜ今、“魂入れ替わり”なのか
この2作の連続登場は偶然ではない。
韓国ドラマでは近年、「タイムスリップ」「憑依」「記憶の共有」といった「人格の境界を揺さぶる設定」が増えている。
その中でも魂の入れ替わりは、恋愛・成長・社会批評を同時に描ける万能装置として機能する。特に時代劇では、「王と民」「男と女」「支配者と被支配者」といった固定された立場を一度“解体”する装置として、非常に相性が良い。
「この川には月が流れる」が“感情の交換”を描いた作品だとすれば、「愛する盗賊様よ」は“人生そのものの交換”に踏み込む作品と言えるだろう。
■ 2作を続けて観ることで見えてくるもの
MBCからKBS2へ――
放送局もトーンも異なる2作品だが、続けて観ることで、韓国時代劇ロマンスの進化がより鮮明になる。
魂が入れ替わるのは一時的な出来事だ。
しかし、その体験が残す“心の変化”は、元に戻ったあとも消えない。だからこそ視聴者は、「元の人生に戻った二人が、どんな選択をするのか」を最後まで見届けたくなる。
なお、12月23日現在、「この川には月が流れる」日本での配信・放送は未定。「愛する盗賊様よ」はU-NEXTシリーズとして韓国と同日配信されることが本日発表された(navicon既報)。
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