【韓ドラ歴史コラム】架空の物語に刻まれた史実の影「愛する盗賊様よ」が映し出す燕山君の時代

01月09日19時00分ドラマ
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U-NEXTで配信中のKBS土日ドラマ「愛する盗賊様よ」(은애하는 도적님아)は、実在の王や史実を直接描く作品ではない。しかしその世界観は、朝鮮王朝史の中でもとりわけ混乱と恐怖に満ちた時代、第10代国王・燕山君の治世を強く想起させる構造で描かれている。登場人物の名前や事件は架空ながら、政治構造や人物配置は明確に“あの時代”を下敷きにしている。

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暴君イ・ギュが体現する絶対権力愛する王(ハ・ソクジン)作中で王として君臨するイ・ギュ(ハ・ソクジン扮)は、気だるく冷酷で、臣下を弄び、反対意見を容赦なく排除する絶対権力者として描かれる。世子時代には聡明と評されながら、王位に就くと抑圧してきた本性を解き放つ姿は、史実における燕山君の変貌と重なる。気まぐれな粛清、言葉一つで宮廷の空気を凍らせる支配、恐怖によって保たれる秩序は、まさに燕山君治世を象徴する描写だ。

暴君を手玉に取る王の女は張緑水愛する盗賊様よ王の女 クムノク(ソン・ジウ)長い妓生生活で王の心を先読みして機嫌を取り、暴君を手玉に取っている王の女人クムノク(ソン・ジウ扮)は、悪女として歴史に名を残す張緑水(チャン・ノクス)を彷彿とさせる。

奸臣イム・サヒョンと任士洪の面影愛する盗賊様よイム・サヒョン(チェ・ウォニョン)イ・ギュの側で権勢を振るうイム・サヒョン(チェ・ウォニョン扮)は、燕山君の側近として知られる奸臣・任士洪(イム・サホン)をモチーフにした人物と考えられる。王の意を巧みに操り、忠臣を排除し、恐怖政治を制度として完成させていく姿は、史実の任士洪像と重なる。彼の存在によって本作は、単なる権力闘争ではなく、「暴君の時代がどのように作られるのか」を描く政治劇としての厚みを持つ。

その後の王を想起させるイ・ヨル愛する盗賊様よトウォル大君イ・ヨル(ムン・サンミン)物語のもう一つの軸となるイ・ヨル(ムン・サンミン扮)は、民と現実を知る視点を持ち、イ・ギュとは異なる統治像を感じさせる人物だ。この配置は、燕山君の後を継いで即位した中宗を想起させる。暴政の果てに現れる「別の王の可能性」を示す存在として、イ・ヨルは歴史的記憶と重なる役割を担っている。

義賊「ギルドン」が生まれる必然愛する盗賊様よホン・ウンジョ/別名:ギルドン(ナム・ジヒョン)こうした暴君の時代を背景に生まれるのが、ホン・ウンジョ(ナム・ジヒョン)の裏の顔、義賊「ギルドン」である。ギルドンという名は、「길(道)」と「동(共/友)」─道を共にする者という意味から民が呼び始めた名だ。王や制度ではなく、弱き者の側に立つ存在を指す呼び名であり、民と共に歩む義賊の象徴でもある。

「逆賊―民の英雄ホン・ギルドン」との系譜
逆賊MBC「逆賊―民の英雄ホン・ギルドン―」 ©2017 MBCこの命名は、燕山君の治世を舞台にしたMBCの史劇「逆賊―民の英雄ホン・ギルドン」を強く意識したものと考えられる。史実・伝説上のホン・ギルドンは、暴君と腐敗した権力の時代に現れた、民が名付けた正義の象徴だった。「愛する盗賊様よ」のギルドンもまた、法では救われない民のために動き、奪われたものを取り戻し、体制の外から歪みを正そうとする存在として描かれている。

架空だからこそ描ける「燕山君の時代」
「愛する盗賊様よ」は史実をなぞるドラマではない。しかし、暴君、奸臣、恐怖政治、そして民の側に立つ義賊という構図は、朝鮮王朝史が記憶してきた燕山君治世の本質を鮮明に映し出している。史実の人物名を用いずとも、「暴君の時代とは何か」「正義はどこにあるのか」を問いかける点で、本作は極めて歴史的想像力に富んだ作品だ。

「盗賊」とは、民が選び取った正義
タイトルにある“盗賊”とは、単なる犯罪者ではない。それは、王が愛されなくなった時代に、民が選び取った正義の姿である。「愛する盗賊様よ」は、燕山君の治世を下敷きにしながら、暴君の時代にしか生まれない光と影を描いた、重層的な歴史ドラマとして位置づけられる。

魂の入れ替わりが浮かび上がらせる、この物語の核心
「愛する盗賊様よ」は、天下一の大泥棒となった女性ホン・ウンジョと、彼女を追う大君イ・ヨルの魂が入れ替わることで物語が大きく動き出す。この設定は、本作のテーマそのものを浮かび上がらせる装置だ。

医女として、義賊として民の痛みを知ってきたウンジョは、王族の身体を得ることで、初めて権力の内側から国の歪みを見る。一方、王族として生きてきたイ・ヨルは、追われる身となることで、法や制度の外で生きる民の現実と向き合うことになる。

この魂の交錯は、燕山君の治世を思わせる暴政の時代に欠けていた、立場を越えた理解を可視化する装置だ。義賊ギルドンが民の側に立つ存在であるなら、入れ替わりを経験したイ・ヨルは、初めて民と同じ地平に立つ王族となる。
愛する盗賊様よホン・ウンジョ(ナム・ジヒョン)、イ・ヨル(ムン・サンミン)本作が描くロマンスとは、恋愛にとどまらない。立場も身分も越えて互いを理解し、互いを救い合う関係性そのものだ。「愛する盗賊様よ」は、魂の入れ替わりという設定を通して、暴君の時代に必要なのは権力ではなく、他者の痛みを想像する力だと静かに問いかけている。

緊張とときめきを行き来するKBS2TV土日ミニシリーズ「愛する盗賊様よ」第3話は、1月10日21時20分から放送、その後、U-NEXTで独占配信される。

KBS2「은애하는 도적님아」HP

YouTube|KBS drama「은애하는 도적님아」EP.3予告

kandoratop【作品詳細】【「愛する盗賊様よ」を2倍楽しむ】