Netflix韓国映画『今夜、世界からこの恋が消えても』レビュー 日本版と何が違う?

19時20分映画
Netflixシリーズ『今夜、世界からこの恋が消えても』独占配信中

2月3日、Netflixにて韓国映画『今夜、世界からこの恋が消えても』が配信開始され、【今日の映画TOP10(韓国)】で1位を獲得。日本でも2位にランクインするなど、日韓で大きな反響を呼んでいる。本作は、一条岬希による同名小説を原作とした日本映画の韓国リメイク版。本記事では作品レビューとともに、日本版との違いにも注目したい。



“記憶が残らない恋”が生む、切なく誠実な物語
物語の中心にあるのは、眠って目覚めるたびに前日の記憶を失ってしまう「前向性健忘症」を患う少女と、無味乾燥な日常を生きてきた平凡な少年の恋だ。毎日が初対面になるという条件のもとで育まれる恋は、派手な展開よりも感情の積み重ねによって描かれていく。

主人公キム・ジェウォン(チュ・ヨンウ)は、ある出来事をきっかけに、友人を救うためソユン(シン・シア)へ“嘘の告白”をすることになる。ソユンは眠るとその日の記憶が消えてしまう病を抱え、毎朝、自分の日記を読み返して記憶をつなぎとめている少女だ。彼女の秘密を知ったジェウォンは、「明日の君が忘れてもいいくらい、本当に楽しい一日を作りたい」と決意し、日記を“幸せな記憶”で埋めていく。

恋を重ねるほどに、忘れられてしまう恐怖や無力感が募っていく構成は、観る側にも静かな痛みを残す。“記憶が残らない恋”という設定は奇抜さのためではなく、恋の儚さと尊さを際立たせるための装置として、丁寧に機能している。

今夜、Netflixシリーズ『今夜、世界からこの恋が消えても』独占配信中
明るさと余韻が同居する、韓国版ならではの演出
韓国版は、原作や日本版の静謐で儚いトーンとは異なり、青春らしい明るさやユーモラスな日常描写を重視している。色彩豊かな風景や自然光を活かした映像が印象的で、涙を誘う場面の直前にも笑いが置かれ、感情のアップダウンがはっきりした構成になっている。

水族館やバス、屋外デートといった日常的なシーンにも映像美が散りばめられ、記憶が消える設定を強調するため、手書きメモではなくスマートフォンでの記録や、靴ひもを結ぶといった“手続き記憶”が物語に組み込まれている点も現代的だ。



日本版との違いが浮かび上がらせる“記憶”のテーマ
物語の基本設定や「3つのルール」は日本版を踏襲しているが、細部には印象的な変更が加えられている。象徴的なのが、ジェウォンの父親の職業だ。日本版では「小説家」だった父が、韓国版では「写真家」に変更されている。

一瞬の光景を切り取る写真というモチーフは、「記憶は消えても感覚として残る」という本作のテーマと強く結びつく。また、日本版で描かれていた姉の存在が省かれている点も、物語をよりシンプルで一直線なラブストーリーへと導いている。

音楽とキャストが形作る、韓国版の個性
韓国版の大きな魅力のひとつが、K-POPを軸にした音楽面だ。Red VelvetのJoy、PLAVE、Ga-in&Jo Kwonなど、豪華アーティスト陣がOSTを担当し、映画を観終えたあとも余韻として音楽が強く残る。

福本莉子が演じたヒロインを韓国版で演じるシン・シアは、『THE WITCH/魔女』で見せた強烈な印象とは異なり、本作では透明感のある等身大の女子高生を好演。その明るさが作品全体の中毒性を高めている。一方、ジェウォン役のチュ・ヨンウは、日本版の道枝駿佑(なにわ男子)が見せた儚さとは対照的に、正義感と包容力を備えた“守る男”の像を際立たせている。

誠実さが心に残る一本
物語の展開は比較的オーソドックスで、先の展開が読めると感じる人もいるかもしれない。それでも本作が支持を集めているのは、驚きよりも誠実さを選び、恋そのものの儚さと尊さを真正面から描いているからだ。

派手な感動を押し付ける作品ではないが、観終わったあと、ふとした瞬間に思い出してしまう余韻がある。『今夜、世界からこの恋が消えても』は、涙を誘う恋愛映画であると同時に、「想い続けること」の意味を静かに問いかける一本だ。

『今夜、世界からこの恋が消えても』韓国版はNetflixにて独占配信中、日本版も内診中だ。