「スキャンダル」は“耳”でも観る!パンソリで始まりパンソリで終わる、官能ロマンスを彩る音楽の秘密【韓ドラコラム】
2026年9月18日、Netflixで世界配信がスタートした韓国ドラマ「スキャンダル」。ソン・イェジン、チ・チャンウク、ナナが繰り広げる危険な恋のゲームを朝鮮時代に置き換えた本作は、韓服や韓屋、民画、手紙など、目を奪われる美しい映像表現でも注目を集めている。
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しかし、「スキャンダル」の魅力は“目”だけではない。欲望や嫉妬、孤独、愛情といった登場人物の感情をより濃密に伝えているのが、随所に流れる音楽だ。
なかでも大きな特徴が韓国の伝統芸能である**パンソリ**。さらにクラシックの響きを取り入れた劇伴が、朝鮮時代の物語に現代的で妖艶な空気を加えている。
■「パンソリで始まり、パンソリで終わる」――監督がこだわった音
「スキャンダル」の音楽を語るうえで欠かせないのがパンソリだ。
パンソリとは、歌い手である「ソリクン」と太鼓を叩く「コス」によって、物語を歌と語りで表現する韓国の伝統芸能。独特の節回しと力強い声、太鼓のリズムによって、人間の感情や物語をドラマチックに伝えていく。
チョン・ジウ監督は制作発表会で本作について、「パンソリで始まってパンソリで終わる」構造を作ったと明かしている。韓国の視聴者にパンソリの美しさや面白さを伝えたいという思いもあり、視聴する際にはパンソリがどのように作用しているのかにも注目してほしいと語った。
つまり、パンソリは単なる時代劇らしさを演出するための音ではない。
チョ氏夫人(ソン・イェジン)、チョ・ウォン(チ・チャンウク)、ヒヨン(ナナ)が抱える欲望や孤独、葛藤など、言葉にならない感情を代弁するように響くのである。
■「語れない感情」を歌と太鼓が語る
「スキャンダル」の舞台は、儒教的な社会規範が人々の生き方を強く縛っていた朝鮮時代。
とりわけ女性たちは、自分の欲望や感情を自由に口にすることが難しい。そんな登場人物たちの内面を表現するうえで、パンソリという形式は非常に相性がいい。
画面の中で人物が言葉にできない思いを抱えているとき、パンソリの歌声がその感情をすくい上げる。愛なのか、執着なのか、嫉妬なのか、それとも自分の人生を選びたいという欲望なのか――。
Netflixも本作について、社会のタブーに逆らいながら「深い欲望」を追い求める人物たちを描く作品と紹介している。
■西洋の古典文学×朝鮮時代――クラシックが生む妖艶さ
もう一つ見逃せないのが、クラシカルな音楽を取り入れた劇伴である。
「スキャンダル」は、1782年に発表されたフランスの古典小説『危険な関係』を原作の一つとし、それを朝鮮時代へと移した物語。音楽にも、東洋と西洋が交差するような感覚がある。
朝鮮時代を象徴するパンソリや伝統的な音の響きがある一方、クラシカルな旋律が恋愛ゲームの緊張感や、人物たちの官能的な感情を包み込む。
チョ・ウォンが恋愛ゲームを仕掛ける場面では軽快でありながらどこか不穏に、やがて本物の感情へと変化していくにつれ、音楽も重く、切実なものへと変わっていく。
■公式サウンドトラックにも“物語”がある
9月18日の配信開始に合わせて公開された公式サウンドトラックにも、「スキャンダル」の音楽世界が表れている。(Netflix’ The Scandal Soundtrackより)
「Main Theme」「Love Letter」「Bukchon Scandal」「Loving」「I Want to Live」「Moonlit Night」「Uncontrollable Rumor」「Three Hearts」など、物語や登場人物の感情を思わせるタイトルが並ぶ。
さらに、フランスのクラシック作品に由来する「Le Sommeil」や、「Après un rêve」をベースにした楽曲も収録されており、パンソリだけでなく西洋クラシックの要素も取り入れていることが分かる。
「Love Letter(恋文)」「Three Hearts(3つの心)」などのタイトルは、手紙によって人物たちの本心が明らかになっていく物語とも響き合う。
■美しい映像と音楽が重なるとき、「スキャンダル」はさらに官能的に
「スキャンダル」では、韓服の色彩、韓屋の空間、夜の照明、手紙や民画など、画面の隅々まで計算された美術が目を引く。
そこにパンソリやクラシックを融合させた音楽が加わることで、単なる“美しい時代劇”では終わらない独特の世界が生まれている。
特にパンソリは、画面の外側から物語を見つめる“語り手”のような役割を果たしているともいえる。
登場人物が笑っていても、心の中では傷ついている。愛を口にしていても、それが本当の愛なのか、勝負に勝つための演技なのか分からない――。そんな人物たちの二重性を、パンソリの声や太鼓の音が浮かび上がらせる。
■「スキャンダル」を見るなら「何が流れているか」にも注目
「スキャンダル」は、フランスの古典文学を朝鮮時代に移し、現代の感覚で再解釈した作品。だからこそ、その音楽も一つの文化に限定されない。朝鮮の伝統であるパンソリと、西洋クラシックを思わせる旋律。その二つが官能的な映像とともに、3人の男女の危険な恋を包み込む。「パンソリで始まり、パンソリで終わる」というチョン・ジウ監督の言葉を意識して見直してみると、同じ場面でも違った感情が聞こえてくるかもしれない。
ソン・イェジン、チ・チャンウク、ナナが演じる3人の視線や表情だけでなく、その背後で鳴っている音にも耳を澄ませたい。
目で見る「スキャンダル」から、耳で感じる「スキャンダル」へ。
パンソリ、クラシック、そして人物たちの感情を映す劇伴。そのすべてが重なったとき、この危険な恋の物語は、より妖艶で、より切実なものとして響いてくる。
「スキャンダル」は、朝鮮時代、優れた才能を持つ女性“チョ氏夫人”と朝鮮最高のプレイボーイ“チョ・ウォン”が繰り広げる大胆で危険な愛の賭けごと、そしてその賭けごとに絡み合う女性“ヒヨン”の話を描いたロマンス時代劇。【「スキャンダル」を2倍楽しむ】では、制作発表会レポート、キャスト・キャラクター徹底解説、原作紹介、全話あらすじと見どころ、時代背景、ロケ地などドラマを深掘りしていく。
◇本予告