【韓ドラコラム】「赤い袖先」と「イ・サン」を比べてみた①ヒロインの名前が違うのはなぜ?
明日5月17日からテレビ東京にてイ・ビョンフン監督の大ヒット時代劇「イ・サン」が久々の再放送となるが、イ・ソジンが演じた主人公は朝鮮時代の名君・正祖で、2PMのジュノが「赤い袖先」で演じている。時代も主人公も同じ2作のどこが違うのか?今回は、作品と登場人物の名前に注目した。
②友情編:生涯の友から視聴者を号泣させた友情まで
③ロマンス編:ヒロインが側室になるのを拒んだ理由は?
2作品の舞台は18世紀後半、500年の王朝史においてもっとも波乱万丈、紆余曲折の人生を送った王であり、進んだ考えを持つ改革君主である朝鮮王朝第22代・正祖、イ・サンの物語。その劇的な人生や挫折、成功や後悔、輝かしい実績や切ない愛と友情をドラマチックに描いている。
■最高視聴率38.9% vs 演技大賞8冠
「イ・サン」(原題:이산 李祘)は、韓国MBCで開局46周年の特別企画ドラマとして、2007年9月17日から2008年6月17日まで放送され、40%に迫る視聴率を叩き出し、あまりの人気の高さに話数が延長されるほどの大ヒットとなった。演出はイ・ビョンフン監督、脚本はキム・イヨン。主人公はイ・ソジン、ヒロインはハン・ジミン。
2007年に「MBC演技大賞」において以下の賞を受賞。
・男性最優秀賞:イ・ソジン(イ・サン役)
・女性優秀賞:ハン・ジミン(ソン・ソンヨン役★)
・男性新人賞:ハン・サンジン(ホン・グギョン役●)
・特別賞/子役賞:パク・チビン(イ・サン/幼少期役)
・黄金の演技賞/時代劇部門:イ・スンジェ(英祖役)
・作家賞:キム・イヨン
「赤い袖先」(原題:옷소매 붉은 끝동(袖先赤いクットン))は、韓国MBCで「イ・サン」以来13年ぶりに正祖が蘇ったと話題になった。2021年11月12日~2022年1月1日まで放送され、ジュノ除隊後の復帰主演作としても注目を集めた。初回の視聴率 5.7%から17.4%まで数字を伸ばし、TV 話題性ドラマ部門(グッドデータコーポレーション調べ)では8週連続1位という記録を達成し、人気の凄まじさを立証した。 あまりのヒットに1話延長。演出はチョン・ジインPD、脚本はチョン・ヘリ。主人公はジュノ・2PM(イ・ジュノ)とイ・セヨン。
2021年「MBC演技大賞」において以下の賞を受賞。
・男性最優秀賞:ジュノ(2PM)(イ・サン役)
・女性最優秀賞:イ・セヨン(ソン・ドギム役★)
・男性新人賞:カン・フン(ホン・ドクロ役●)
・助演女優賞:チャン・ヘジン(ソ尚宮)
・功労賞:イ・ドクファ(英祖役)
・ベストカップル賞:ジュノ(2PM)&イ・セヨン
・作家賞:チョン・ヘリ
・今年のドラマ
※ ★と●に関してはそれぞれ同一人物。共に作家賞とメインキャストの4人が揃って受賞しているとはすごい!甲乙つけがたい素晴らしい作品だ。
■アジアの至宝イ・ビョンフン監督vs徹底リサーチした原作
「イ・サン」全77話、「赤い袖先」全17話。話数が多い分、「イ・サン」では正祖の遺業が随所に盛り込まれ、実在人物も多数出ており、「イ・サン」=史劇、「赤い袖先」=フィクションと考える方も多いのでは?
だが、イ・ビョンフン監督と言えば、歴史書の「大長今と呼ばれて重用され、王の主治医となった医女がいた」の1文から全54話の大ヒット作「宮廷女官チャングムの誓い」を世に送り出した監督。わずかな史実を手掛かりに長編フィクションを書くのが得意中の得意の監督だ。脚本を担当したキム・イヨンは「トンイ」「馬医」「華政(ファジョン)」「ヘチ~王座への道~」などを手掛けた時代劇の大家だが、「イ・サン」は初めての時代劇だった。当時、相当なプレッシャーだったようで、予定を1か月先延ばしして『朝鮮王朝実録』など関連資料十数冊を読んで執筆をはじめたと、イ監督が著書『韓流時代劇の魅力』で語っている。
一方で、「赤い袖先」は韓国でベストセラーとなった小説『袖先赤いクットン』が原作。カン・ミガン作家が17歳だった2007年~2015年まで8年の歳月をかけて歴史検証、考証をして書き上げた。それだけに、ヒロイン宜嬪成氏に関しては徹底的にリサーチして史実に近いはず。さすがにロマンスの詳細は調べようもないだろうが、登場人物やその家族関係なども、正祖の妹チョンソン公主(王女)の夫の名前が違っていたりするが、比較的事実性が高いと評価されている。そんな原作を、「仮面の王 イ・ソン」のチョン・ヘリ脚本家が担当した。
■なぜ実在人物の名前が違うの?
主人公イ・サンは同じなのに、ヒロインと側近の名前が違う。
▼ヒロイン・宜嬪成氏(의빈 성씨)
「イ・サン」=ソンヨン、「赤い袖先」=ドギム(またはドクイム)。
▼正祖の右腕・洪国栄(홍국영)
「イ・サン」=ホン・グギョン、「赤い袖先」=ホン・ドクロ。
先に放送された「イ・サン」から“ソンヨン”や“ホン・グギョン”の呼び名になれて、“ドクイム/ドギム”や“ドクロ”に面食らった方も多いのでは?
宜嬪成氏に関する歴史資料は少なく、イ監督は宜嬪成氏を“ソンヨン”と呼ばせてフィクションでヒロインを創り出した。だが、一説には宜嬪成氏の名前は“成徳任(성덕임)”とも紹介されており、「赤い袖先」ではその名前を使い、日本では“ソン・ドクイム”または連音化して“ソン・ドギム”としている。
また、洪国栄に関しては「イ・サン」はそのままの読み“ホン・グギョン”を当てているが、「赤い袖先」の“ドクロ”も本人の名前だ。こちらは洪国栄の字(呼び名)の“徳老(ドクロ)”を使った、史実に倣ったものだったのだ。
次回は、ロマンスと友情について比べて見たい。
両作品ともDVD発売、レンタル中。2022年10月現在、「赤い袖先」はWOWOWなどで、「イ・サン」はテレビ愛知などで放送中。詳しくは以下の【2倍楽しむ】で各話のネタバレあり/なしあらすじと見どころ、歴史背景などもまとめて紹介している。
【作品詳細】【「イ・サン」を2倍楽しむ】
◇「イ・サン」公式サイト
【作品詳細】【「赤い袖先」を2倍楽しむ】
◇「赤い袖先」公式サイト