【歴史】韓国の国民的英雄・李舜臣を徹底解説!映画『ハンサン ―龍の出現―』公開前に予習

2023年02月25日10時45分映画
©2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED. / イ・スンシン役:パク・ヘイル

映画『ハンサン ―龍の出現―』(3月17日公開)で、パク・ヘイルが演じる主人公の李舜臣(イ・スンシン)は、朝鮮水軍の将軍として日本の大軍から国を守り抜いた不出世の英雄。映画を2倍楽しむために李舜臣がどんな人物だったのか鑑賞前に予習しておこう。予告動画などは映画公式サイトで公開中だ。



李舜臣(イ・スンシン)と言えば、日本の豊臣軍相手に朝鮮水軍を率いて不敗神話を打ち立て、韓国ではハングルを創製した世宗大王(セジョンテワン)と並んで知らない人がいない英雄だ。
©navicon©navicon/『忠武公 李舜臣銅像』/手前には小さな亀甲船も!韓国旅行をしたことのある方なら、ソウル特別市の光化門広場(世宗路)にある『忠武公 李舜臣銅像』を見た方も多いのでは?この銅像は1968年に建てられた。この場所には、当初世宗大王の銅像を建てる予定だったが、風水地理学者らが「世宗路と太平路の間が空き、南の日本の気運が強く入ってくる。これを制御する必要がある」と主張し、李舜臣将軍の銅像になったそうだ。銅像は釜山の龍頭山公園にもあり、どちらも南、つまり日本に向いて立っている。
※“忠武公(チュンムコン)”とは将軍が亡くなってからつけられた諡(おくりな)。

では、そんな国民的英雄、李舜臣の生涯を紹介しよう。

■李舜臣(이순신=イ・スンシン)1545年生~1598年没
李舜臣は1545年3月8日、貧しい両班(貴族階級)の三男として生まれた。当時は第13代王・明宗の治世で朝鮮では党争(派閥争い)に明け暮れていた。一方日本は戦乱により室町幕府の権威が地に落ち、戦国大名が乱立したまさに戦国の世だった。

李舜臣は少年時代から優秀で人望もあり、馬術と弓術で驚くべき技能を発揮したと言われている。20代で官吏登用試験でもある科挙(武科)を受けたが、落馬で不合格。合格したのは32歳で遅咲きの役人スタート。潔癖すぎる剛直さと妥協しない姿勢のために不遇の役人生活を送っていたが、1591年幼馴染の柳成龍※に推薦され全羅左水使(海軍を統率する正三品の武官)に異例の出世で将軍となった。
※柳成龍(リュ・ソンニョン)は、日本で人気の俳優兼歌手のリュ・シウォンのご先祖さまだ。

■亀甲船で日本から朝鮮を守った武将
『ハンサン』閑山島海戦豊臣秀吉による最初の朝鮮出兵「壬辰倭乱(文禄の役)」が起きたのは1年後の1592年4月13日。朝廷は相変わらず党争を繰り返し戦争に対する準備をしておらず、開戦から数か月でほとんどの国土が日本軍に占領されてしまった。しかし、李舜臣は開戦前から準備をしていた。船の上を鉄板で覆って武装した戦闘用の特殊船「亀甲船」を作って軍事訓練を重ねていたのだ。海戦では地形から潮流の変化まで計算しつくした緻密な作戦で日本軍相手に連戦連勝の活躍を見せた。日本の脇坂軍と戦った1592年「閑山島」の勝利は長く語り継がれている。
※「閑山島」の海戦がまさに映画『ハンサン ―龍の出現―』の舞台だ。

この活躍で李舜臣は慶尚道・全羅道・ 忠清道の水軍を統べる指揮官・三道水軍統制使に出世する。しかしその後、朝廷の党派の争いに巻き込まれて第14代王・宣祖により罷免され、監獄に入れられる。後任には元均(ウォン・ギュン)が命じられる。

ウォン・ギュン役:ソン・ヒョンジュ元均(ウォン・ギュン)役:ソン・ヒョンジュ1597年に再び日本が攻め込む丁酉倭乱(慶長の役)が起き、元均が「漆川梁海戦」で大敗すると、宣祖は慌てて李舜臣を呼び戻して三道水軍統制使に再任。李舜臣は1597年「鳴梁海戦」の勝利に続いて1598年「露梁海戦」でも善戦する。しかし海戦の最中に被爆し1598年3月、53歳で命を終えた。彼は死の前に、「私の死を秘して戦え」と命じ、明と連合した朝鮮軍は7年にも渡った戦争を勝利で終えた。

■コリア史上唯一、王が墓に碑文を書いた英雄
『宣祖実録』は李舜臣の死を「訃報が伝わると湖南(ホナム=全羅道)一帯の全ての人々、老婆や子供たちまでが痛哭した」や「国家のための忠誠と命を賭して戦った義理は、かつてのどんな名勝でも彼に勝るものはいない」と伝えた。朝廷では亡き李舜臣に右議政の職を贈り、6年後には左議政を追贈して徳豊府院君(正一品の品階を受けた功臣)に封じた。第16代王・仁祖時代には忠武公の諡号が下され、第22代王・正祖の治世17年には領議政(現在の大韓民国の国務総理)に追贈した。墓には故人の業績を伝えるために石碑が墓前に建てられ、正祖が直接碑文を書いた神道碑もある。王が臣下の墓に碑文を書いたのは李舜臣の墓だけ。李舜臣は現在も国民の英雄として褒め称えられている。

■敵国・日本も認めた不出世の軍神
朝鮮だけでなく、当時共に戦った隣国・明でも「天地を思い通りに操る祭主で、空と海を手に入れた公だ」と称えた。
ハンサン脇坂安治役:ピョン・ヨハン「閑山島」で戦った脇坂安治は「私がいちばん恐れる人は李舜臣であり、最も憎い人も李舜臣であり、最も好む人も李舜臣であり、最も欽慕して崇めたてる人も李舜臣であり、最も殺したい人もやはり李舜臣であり、最も茶を一緒に飲みたいのもまさに李舜臣だ」と敵である李舜臣に最高の賛辞を贈っている。後年にも「イギリスのネルソン提督さえも到底肩を並べることができない」「偉大な人格、優れた戦略、天才的創造力、外交的な手腕などはこの世のどこにおいても彼に代わる人物を探すことができない絶世の名将」などと激賞されている。歴史作家の司馬遼太郎も「李舜臣は清廉な人物で、その統率力と戦術能力を見ても、忠誠心と勇気を見ても、このような人物が実在したという自体が奇跡というほかない理想的軍人だった」と評している。(『忠武公 李舜臣』より引用)

そんな英雄が主人公の映画『ハンサン ―龍の出現―』は、2023年3月17日よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー!

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■作品概要
出演:パク・ヘイル『別れる決心』 ピョン・ヨハン『声/姿なき犯罪者』 アン・ソンギ『ディヴァイン・フューリー/使者』  オク・テギョン(2PM) 
監督:キム・ハンミン 『神弓-KAMIYUMI-』『バトル・オーシャン 海上決戦』
2022年/韓国/韓国語、一部日本語吹替/130分/シネスコ/5.1ch/原題:한산 : 용의 출현/字幕翻訳:福留友子  R-15
配給:ツイン   hansan-movie.com 
©2022 LOTTE ENTERTAINMENT & BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED. 

韓国映画『ハンサン ―龍の出現―』公式サイト
本予告

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