【韓ドラコラム】「コッソンビ 二花院の秘密」でヒョヌが演じた王イ・チャンは実在の王?作中の設定から考察!
Prime Videoで全18話独占配信中の韓国ドラマ「コッソンビ熱愛史(コッソンビ 二花院(イファウォン)の秘密)」は、朝鮮時代を背景にしたフュージョン時代劇!5月17日に配信開始した最終回(第18話)で、リョウンと1対1の勝負をしたヒョヌが演じた王イ・チャンは、暴君と人物設定されているが、実在の王なのか?検証してみた。
★「コッソンビ二花院の秘密」って?
「コッソンビ熱愛史」は、朝鮮時代のシェアハウス“二花院”を舞台に、女主人ユン・ダノと、秘密を抱えながら役人登用試験“科挙”を受験するイケメン3人、カン・サン、チョン・ユハ、キム・シヨルとの爽やかで大胆なミステリー密着恋愛話だ。
Prime Videoで独占配信中!それぞれ「人生最高の贈り物~ようこそ、サムグァンハウスへ~」のリョウン、「偶然見つけたハル」のチョン・ゴンジュ、「赤い袖先」のカン・フンが演じている。この3人と「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」での悪役が注目を集めたシン・イェウンとが愛と友情の青春ロマコメを展開する。だがそこに“廃世孫イ・ソル”が誰なのかを探す考察ミステリーを加味したことで他の時代劇と一線を画した。視聴者はミスリードされたり、惑わされたりと話数が進むほどに面白くなる。
※ドラマ未視聴の方は各話のネタバレあらすじと見どころなど【「コッソンビ」を2倍楽しむ】でまとめているので参考にされたい。
★王位を簒奪したイ・チャンはどんな王?
王イ・チャンは、13年前に兄である世子イ・ピョンと弟のクムリョン大君を殺して王になった。謀反を起こした日に、世子の息子・世孫イ・ソルを逃がしてしまう。その後、十数年の月日が流れ、成長した世孫に報復されるのではないかと不安に生きてきた。そんな王は暴君となり、周りの誰も信じられずに占いに頼るようになっていた。
※この王イ・チャンを演じたのは「魔女の愛」でワケあり御曹司を演じたヒョヌ。
★検証結果
イ・チャンを特定する一番の手掛かりは「政変」、クーデターだ。「政変」で始まり「政変」で幕を閉じた。朝鮮王朝歴代27人の王のなかで、そんな王はおらず、イ・チャンに近い王は実在しない。それでもドラマを色々検証していくと、イ・チャンの人格「暴君」「愛情欠乏」から第10代・燕山君(ヨンサングン)が浮かび上がる。もっとも燕山君は先代王(成宗)の嫡男。
一方、もう少し時代が下がった第16代・仁祖も政変で王になっている。ただし次代は政変ではなく息子である第17代王・孝宗に渡っているが、仁祖もまた暴君と呼ばれているだけに、この2人の王を念頭に置けばいいだろう。
では、なぜそう考えたのかを、以下にまとめているので、興味のある方はぜひ、最後まで読んでほしい。
①実在王探しの手掛かり
朝鮮王朝では「政変」とは似て非なる「反乱・内乱」(政府に対する反発を持って武力闘争)などを利用して結果的に王位に就いた王もいる。そこでそうした王も含めて、「兄弟殺し」「暴君」などを手掛かりにイ・チャンに近い王様をリストアップしてみた。
※歴代王に関しては【朝鮮王朝系図】を参考にしている。また、以下の青文字の「王名」や「事件」をクリックするとさらに詳しい紹介ページへ遷移。( )は王の本名、▼は検証、< >はその事件または事象が話題に上った放送回。※は関連ドラマ。
●第3代・太宗(イ・バンウォン)【兄弟殺し】
「太宗イ・バンウォン」©KBS太祖の5番目の子で王位継承者としての地位は低いが、父の武人気質を兄弟のなかで一番濃く受け継いだ。父と共に前王朝の高麗を倒し、父を王にした。だが、太祖が嫡男で幼い異母弟を世子にしたことに腹を立て、2つの「王子の乱」をおこして兄弟を殺害した後に、王位に就いた。
▼「王子の乱」は政変とは違うものの、結果的にはこれにより太宗は王位に就いた。だが、太宗は実質的に朝鮮を建て、その基礎を築いたと言っても過言ではないほどの優れた人物。イ・チャンとはかけ離れている。
※「太宗イ・バンウォン」、「六龍が飛ぶ」ほか
●第7代・世祖(イ・ユ)【兄弟・甥殺し】【暴君】
「不滅の恋人」@2018 TV CHOSUN世宗の次男で王位継承者としての地位は低く、本来王になれないはずだったが、兄(文宗)が早死にし、幼くして王になった甥(端宗)になると、自分を慕う勢力と共に「癸酉靖難(ケユジョンナン)」を起こして王位を奪って王になった。
▼こちらも「癸酉靖難」という乱を起こして最終的には甥の王・端宗から(無理矢理に)譲位されて王になった。側室がドラマと同じ「パク氏」<第1話>ほかだったり、親族や政敵を次々と殺害して暴君という評価もあり、イ・チャンにかなり近い。但し政治手腕は高く評価されており、優秀な統治者という部分は全く異なる。
※「王女の男」、「不滅の恋人」ほか
●第10代・燕山君(イ・ユン)【暴君】
「七日の王妃」Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2017 KBS. All rights reserved名君と伝わる成宗の息子で廃妃尹氏から生まれた。継母を生母と信じて育ったが、継母や父王からの愛情をもらえないままひねくれた自我の持ち主に育ってしまった。王亡き後、王位に登ったが、女色を貪り、特に年上の張緑水を寵愛したたり、伯母を犯したという近親相姦疑惑も。「甲子士禍(カプチャサファ)」「戊午士禍(ムオサファ)」と2度も粛清を行った。
▼順当に王になったが、ドラマと同じように妓生を掌楽院の楽工にして自分の妾にした<第10話>。また気に入らない臣下を殺害<第1話(予言者殺害)>するなど朝鮮一の暴君とされている。ドラマでは大妃から「お前を産んで後悔している」<第16話>と言われるなど愛情に飢えているのも同じで、イ・チャンにかなり近い。
※掌楽院(チャンアグォン):朝廷で儀式などでの音楽の演奏を担当する部署。
※「王と私」、「七日の王妃」ほか
●第11代・中宗(イ・ヨク)【政変】
「師任堂(サイムダン)」©Group Eight燕山君の腹違いの弟。本人の意図しない所で権臣たちが起こした政変「中宗反正(チュンジョンパンジョン)」で担ぎ上げられて王になった。
▼暴君と言うより臣下たちのご機嫌伺いをする弱腰の王。また糟糠の妻と引き裂かれて会いたくなると小高い場所から妻の実家のある方を眺めていたというロマンチックな一面も。この夫婦の悲しい生き別れは「チマ岩」の話で伝わっている。イ・チャンとはかけ離れている。
※「師任堂(サイムダン)、色の日記」、「七日の王妃」ほか
●第15代:光海君(イ・ホン)【兄弟殺し】
「華政(ファジョン)」©2015 MBC宣祖の次男で庶子だが、壬辰倭乱(イムジンウェラン)の時、逃げた父王に替わり実質的な王の役割を担った。庶子であることから国内外から反対があったが、かろうじて王になれた。世子時代から名君の資質を発揮して外交面でもうまくかじ取りをしたが、反対勢力がそうした政策を良しとせず、政変により退陣させられた。
▼政権強化のために継母を廃して、腹違いの弟を殺害したことで「廃母殺弟」という名分を反対勢力に与えてしまい、政変により、廃位された。兄弟殺しや強硬姿勢から、かつては暴君とも評されたが、戦時中に国家の安寧を願い民と共に奔走し、国家の立て直しや世界の流れを見たバランスの取れた中立外交などが近年評価され、名君と言われておりイ・チャンには似ていない。
※「華政(ファジョン)」、「火の女神ジョンイ」ほか
●第16代・仁祖(イ・チョン)【政変】【暴君】
「三銃士」ⒸCJ E&M Corporation, all rights reserved.
光海君に弟を殺され復讐を誓って5年間息をひそめて準備し、光海君の中立外交に反対する勢力と手を組んで「仁祖反正(インジョパンジョン)」を成功させて王になった。だが、王になってからは時代錯誤の手痛い失敗で、清から2度にわたる侵攻を受けてしまう。結局、清の太宗にひざまずいて命乞いをする恥辱を味わう。
▼結果的に2度もの戦争で民に塗炭の苦しみを味わわせたことを考えると、暴君と評されても仕方がないが、ドラマで描かれるイ・チャンの暴君ぶりとは少し異なる。
※「三銃士」、「華政(ファジョン)」ほか
②他の手掛かり
セリフの中には、時代を特定するものもたくさんあるが、筆者は17世紀中旬、仁祖以降の治世と特定した。
これについては、NHK「コッソンビ 二花院(イファウォン)の秘密」の時代背景は?で詳しく説明、検証している。
軽いタッチの時代劇と思ったが、なかなか朝鮮時代をうまく映し出している本作。全話そろったのでご自身で王イ・チャンや、イケメン3士人に近い人物を歴史の中で探してみてはいかがだろう?
【韓流コーナー】には歴史ドラマを楽しむための、「時代別地図」や「系図・ドラマを時系列に並べた「年表」など、役立つ図表などもたくさん用意しているので参考にされたい。
また、Amazon Prime Videoで独占配信している韓国ドラマはこちらで一覧できる→【「Prime Video」で独占配信の韓国ドラマ】
◇韓国SBS「꽃선비 열애사」サイト
【作品詳細】【「コッソンビ」を2倍楽しむ】