降り注ぐ災厄に、神への祈りは通じるのか?映画『アポカリプス 地球最後の日』

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前触れもなく不条理が訪れるとき、人間は何を思うのか?映画『アポカリプス 地球最後の日』はパニックムービーでありながら、そんな人間心理をキリスト教観点から追う意欲作だ。

とつぜんカリフォルニアに飛来した無数の隕石群。その驚異的な破壊力はいくつもの都市を殲滅させ、そして夥しい死傷者を出した。隕石飛来の原因は、地球のすぐ傍へ接近中の巨大アステロイド。自然保護官である主人公のジェイソンは、ロサンゼルスに残された娘のリンジーの安否を確かめるべく妻のアシュリーとともにロスへ急ぐ。しかし、深い親の愛情からの責任感も、この圧倒的な災厄の中ではなすすべもない。道中、妻のリンジーは無力感にさいなまれただ神に祈るばかりとなる。

この映画の特筆すべき点はそこだ。映画『アポカリプス 地球最後の日』にヒーローは居ない。あくまで市井の人々が、破壊的災厄に見舞われたときに究極的に行き着く心理を主眼に描いている。VFX・CGともにすばらしいクオリティーではあるのだが、それにより恐怖をいたずらに煽る演出はしない。むしろそういった”煽り”の手法は意識的に遠ざけられている。そこに物足りないものを感じる人も居るかもしれないが、何しろこの映画のタイトル、アポカリプスは黙示、つまり神から預言者への啓示、そして審判なのだから心理を追う手法の演出で間違っては居ない。むしろ見どころというべき部分はそこであり、その独自な視点こそがこの映画にただならぬ神秘性を恵んでいる。

パニック映画でありながら象徴主義が伺える本作は、人間心理への警句的な作品として独特な面白さを獲得していた。
  • 監督:ジャスティン・ジョーンズ
  • レット・ガイルズ/ジル・ステイプリー/クリステン・クイントラル
  • 年月日 ~ 年月日

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