【韓国歴史コラム】“揀択(カンテク)”は一族繁栄を懸けた女人たちのサバイバルオーディション?

2023年07月28日12時30分ドラマ
「カンテク~運命の愛~」より (C) 2019-20 TV Chosun

韓国ドラマ「カンテク~運命の愛~(原題:揀択~女人たちの戦争~)」のテーマで、多くの韓国宮廷ドラマで描かれるお妃選び!今回はそんなお妃選びの制度である“揀択(カンテク)”について詳しく解説しよう!ドラマの予告動画は公式サイトで公開中だ。



kanteku「カンテク~運命の愛~」より (C) 2019-20 TV Chosun「カンテク~運命の愛」は、時代劇クイーンのチン・セヨンと人気上昇中の次世代スターのキム・ミンギュが共演した話題作。双子の姉を殺した犯人を見つけるために王妃になろうとするヒロインと、予知夢を通してその女性を見る王との愛、そして必ず王妃にならなければならない者たちの戦いが描かれる宮廷サバイバルロマンス。

■揀択の由来は?
揀択(간택=カンテク)とは、王や世子(王位後継者)の妃を選ぶための制度を指す言葉。その由来は李氏朝鮮時代第3代王・太宗による王の婿“駙馬(ふば)”選びの騒動に始まったとされている。
その騒動とはこうだ…
駙馬(부마=プマ/ふば)の正式名称は駙馬都尉(부마도위=プマドウィ)で、元は中国の漢代に、王の輿に付属する馬を管轄する官職名だったが、後に王の婿がこの任に就くようになり、王の婿をこう呼ぶようになり、朝鮮でも王の婿を駙馬と呼んだ。
揀択の始まりは、太宗が、李続(イ・ソク)の息子を王の婿“駙馬”にしようと使いをやったとことろ、「相性が合わないとだめ」と拒まれた。恥をかかされた太宗は李続を庶民に降格し、その息子を生涯妻を娶れないようにした。そして両班の子弟たちを王宮に呼んで、太宗自ら駙馬選びをした。

これが後に王妃や世子嬪選びの制度となった。ちなみに、朝鮮王朝実録に初めて「揀択」の事例が出るのは、第4代王・世宗21年(1439年)の息子・義昌君(의창군=ウィ・チャングン)と漢南君(한남군=ハンナムグン)の配偶者選抜とのこと。

景福宮景福宮 @navicon■揀択は3次テストまで!
揀択の開催が決まると、王族の婚礼を管理する臨時官庁“嘉礼都監(カレトガム)”を設置して禁婚令が出される。これは身分にかかわらず12歳(10歳以下との説もあり)~16歳の年頃の娘たちの婚姻を禁じる令。もっとも揀択へ参加するのは両班の娘たち。個人情報を記した“処女単子(처녀단자=チョニョタンジャ)”を提出させて現代の書類審査のように候補者たちを選び、“揀択”(面接試験)を行う。揀択は“初揀択”、“再揀択”、“三揀択”と3次にわたって行われる。

時代によって異なるが、まず書類審査で30名程度が選ばれ、初揀択を受けるために娘たちは王宮入りする。初めて入宮する時、鉄釜の蓋を踏むしきたりがある。これは宮中での行動を慎重に期すようにという警告を込めたものらしいが、諸説あるようだ。

太陽を抱く月「太陽を抱く月」より (c)2012MBC初揀択で6人前後に絞り込まれ、2週間後に再揀択に進み、3人ほどに絞り込まれる。合格者は一旦家に帰され、半月ほど後、最終選考にあたる三揀択で王室女性にふさわしいかどうかを確認する。その確認が済むと、王が内定者の名を書いて公表する。内定者は王族に挨拶をすると、お妃候補として家には帰れずそのまま別宮に入り、婚礼を挙げる直前まで王妃になるための教育を受ける。

再揀択に合格した3人の帰宅だが、“六人轎(ユギンギョ)”という輿に乗せられ、50人に護衛される。なんとも仰々しいが、三揀択に進む娘たちは“王の女”とみなされるためだ。だから王妃に選ばれなかったとはいえ、残りの2人は生涯結婚できないで独り身で過ごすか、後宮=側室となるしかない。

宗廟宗廟 @navicon■中国皇帝の辞令が必要?
内定者は、王妃候補として教育を受けたのち、婚礼を挙げ、宗廟(皇室の祖先祭祀場)の祖先に報告する。だがこれではまだ王妃として完全な形ではない。“君臣関係”を結んでいた中国の皇帝からの辞令“誥命(コミョン)”を受け、最後に冊封の儀式を挙げた後、初めて国母として遇される。(※朝鮮と中国との関係については第16代王・仁祖で詳しく解説している)
もっともこの手順通りに王妃が選ばれたのは500年の王朝の歴史の中でも13人にすぎない。多くは、世子嬪からそのまま王妃に冊封されるか、王妃が廃位されたり死亡したりして後宮が昇格するという形だ。

揀択に始まる王妃選びは適齢期を持つ両班たちには大きな負担になったが、それでも一族の娘を躍起になって揀択に参加させるには理由があった。

イサン「イ・サン」より
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■揀択は一族繁栄を懸けた権力闘争?
王妃には王の妻として様々な仕事がある。宮中の中を仕切る内助の功はもちろん、宗廟(歴代の王・王妃を祭った霊廟)の祭祀の執り仕切りや、大王大妃(先々代の王の后)や大妃(先代の王の后)が存命の場合はその世話も王妃の務めだ。そして何より大切な任務は息子を産むこと。もし、自分に子が授からなかった場合には、後宮が生んだ王子や王孫を養育して王統を継がせることが最重要任務だ。

王妃が直接政治に参加できる機会はないが、王室で最高の年長者になると、後継者の任命と幼い王や病弱な王に代わって政務を執る“垂簾聴政”で政治に参加できる。王妃に課せられた仕事と特権を使って、李氏朝鮮王朝時代に李氏でなくても王に同等する権力が持てるのが“王妃”の座。王妃の父は“府院君(プウォングン)”として最高の品階である正一品の位に就き、一族も“外戚”として大きな権力を持つことができる。つまり、揀択は一族に絶対権力を持たせるための女人たちによるサバイバルオーディションなのだ(品階については【朝鮮王朝豆知識】の「◆官職の品階」参照)。

■ドラマで描かれる揀択
宮廷絵巻では王妃や世子嬪が物語のキーマンになることが多いだけに、他にも多くの韓国時代劇で揀択が描かれる。
例えば、「イ・サン」でさんざん第22代王・正祖を苦しめた貞純王后金氏が第21代王・英祖の后になれたのは、揀択で「好きな花」を聞かれ「木綿」と答え、その理由を「民の服を作る素材になる」と答えたからというのは実話(詳しくはコチラ)。また、「太陽を抱く月」第4話で娘が最終的に選ばれなかった時に生涯誰とも結婚できないことを案じた母が“処女単子”の提出に大反対したり、最終選考に残らぬようにでたらめな行儀作法を教えたりもした。他にも、「仮面の王 イ・ソン」第12話では揀択を受ける娘たちが王宮入りする際に釜の蓋を踏んで入宮している。こうした過去の文化や制度を知ることができるのも時代劇の醍醐味。【カンテク~運命の愛~(原題:揀択~女人たちの戦争~)】(全16話)韓国ドラマ紹介しかし、これまでの韓国時代劇は、あくまでもドラマの中のワンシーンとして揀択を描いているにとどまっていたが、「カンテク~運命の愛~」ではテーマである揀択についても、初揀択から詳しく描かれるのも見どころの一つだ。

【「カンテク~運命の愛」を2倍楽しむ】では、ドラマのあらすじと見どころ、韓国での評判や時代背景、豆知識など詳しく紹介していく。また、【韓流コーナー:韓ドラここが知りたい】では、同じ時代を一覧したドラマの年表や王朝系図をまとめた【年表】や、各時代別に分けた【半島の地図】、歴史背景や実在人物を紹介する【豆知識】などまとめて紹介しているので、ドラマ視聴の参考にされたい。

(※参考資料:『朝鮮王朝実録』『王妃たちの朝鮮王朝』『韓国時代劇で学ぶ人物大辞典』など)

■キャスト
カン・ウンボ役:チン・セヨン
イ・ギョン役:キム・ミンギュ
イ・ジェファ役:ト・サンウ
チョ・ヨンジ役:イ・ヨルム
ワル役:イ・シオン
キム・ソンイ役:イ・ファギョム

■スタッフ
監督:キム・ジョンミン
脚本:チェ・スミ

■商品概要 ⇒DVD・OST・関連書籍・公式グッズなど一覧表示
全2BOX、各18,700円(税込)/17,000円(税抜)
発売日
 DVD-BOX1:2020年10月2日(金)
 DVD-BOX2:2020年11月6日(金)
特典映像:未定
封入特典:ブックレット
発売元:「カンテク~運命の愛~」日本版製作委員会
販売元:TCエンタテインメント

Youtube「カンテク」予告動画

kandoratop【作品詳細】【「カンテク~運命の愛」を2倍楽しむ】