やっぱり気になる!「100日の郎君様」時代背景とD.O.(ディオ/EXO)世子のモデルは?
K-POPグループEXO(エクソ)のD.O.(ディオ)ことド・ギョンス主演の「100日の郎君様」は、朝鮮時代を舞台にした架空の時代劇だが、いくつかの手がかりからその時代や人物設定などに近づくことができる!2019年7月現在、NHKBSプレミアムにて放送中で、番組公式サイトで予告動画が公開されている。
※以下、史書にあるさまざまな事象や時代劇などから考察しています。そうした歴史に興味のない方は、最後の「■まとめ」だけをご覧ください。また、ネタバレは最低限にとどめていますが、気になる方は2話まで視聴後にお読みください。
「100日の郎君様」は、完全無欠の王世子が命を狙われたために記憶喪失になり、「役立たず男」ウォンドゥクとして朝鮮最高齢の未婚女性ホンシムと夫婦になる前代未聞の100日間のロマンスを描いた大ヒットミステリー時代劇。【「100日の郎君様」を2倍楽しむ】では、各話のあらすじと見どころと共に、韓国での評判や豆知識などをまとめて紹介している。
■劇中のキーワードをチェック!
NHKBSではすでに「100日の郎君様」第1話と第2話が放送されたが、「クーデターにより即位」「妻が王妃になれなかった」「息子がいる」「世子が命を狙われる」など時代を特定する重要な手掛かりが描かれていた。
※以下、王の名前やタイトルクリックすると、別画面で詳細ページにジャンプできる。また、★では韓国時代劇ではどう描かれるかを紹介している。以下に紹介したのは、ほんの一部。それ以外は【ドラマの朝鮮王朝】で一覧できる。
■反正(クーデター)により即位
まず、朝鮮王朝系図を見てみよう。元々、高麗の将軍・李成桂(イ・ソンゲ、初代王・太祖(テジョ))のクーデターにより建国された朝鮮王朝。その息子である李芳遠は2回もクーデターを起こして3代王・太宗(テジョン)となった。7代王・世祖(セジョ)も11代王・中宗(チュンジョン)も16代王・仁祖(インジョ)もみんなクーデターにより王位に就いた。
だが、李成桂は譲位という形を、太宗や世祖はそれぞれ兄・定宗(チョンジョン)と甥・端宗(タンジョン)を王にしてワンクッション置いて王位についており、いわゆる「反正=パンジョン(悪い政治を正す)」と呼ばれたクーデターによる新王誕生は、燕山君(ヨンサングン)を追放して即位した「中宗反正」と、光海君(クァンヘグン)を廃した「仁祖反正」だけだ。
ということで、ここからは11代王・中宗と16代王・仁祖に絞って詳しく調べてみよう。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
韓国時代劇は、大胆な解釈で史実とフィクションを交えて時代を描いている。以下で紹介するドラマも同時代を描きながら大きく解釈が違ったりしている。
初代・太祖~3代・太宗:「六龍が飛ぶ」、「チョン・ドジョン」
5代・文宗~7代・世祖:「不滅の恋人」、「王女の男」
10代・燕山君~仁宗:「宮廷女官チャングムの誓い」、「七日の王妃」
14代・宣祖~仁祖:「華政(ファジョン)」、「王の顔」
■妻が王妃になれなかった!
11代王・中宗には3人の妻と9人の後宮(側室)が、16代王・仁祖には2人の妻と3人の後宮がいる。どちらも最初の妻が王妃となったが、中宗の妻(端敬王后・慎氏)は父方の叔母が暴君・燕山君の妃という理由で廃位されている。中宗と慎氏とはとても仲睦まじかったようで、慎氏廃位については、「チマ岩」の話が伝わっているほど。
となると「100日の郎君様」の舞台は中宗の治世か?もう少し調べてみよう。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
「七日の王妃」のヒロイン、「師任堂(サイムダン)、色の日記」ではヒロインの隣家に暮す元高貴な身分の女性がこの慎氏をモチーフにしていると考えられる。
■息子(大君)がいる
中宗には9男11女を、仁祖は6男1女をもうけている。「100日の郎君様」同様、腹違いの息子がいるのでこの条件はどちらもクリアーしている。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
「宮廷女官チャングムの誓い」や「女人天下」では、大君(王子)らの後継争いなどが描かれている。
■世子(王位後継者)が狙われる
「100日の郎君様」第2話では、クーデター以降心を閉ざした世子(D.O)に父王(チョ・ハンチョル)が、「凶悪な先王(兄)から命を狙われていた」とクーデターの必然性を説いていたように、世子時代に腹違いの兄・燕山君の矛先がいつ自分に向くのかと怯えていた。そしてD.O.が演じた世子も命を狙われる。中宗の長男・仁宗(インジョン)は継母・文定王后から嫌われて焼き殺されそうになっており、仁祖の長男・昭顕世子(ソヒョンセジャ)も思想の相違から父・仁祖と険悪な関係になったあげくに父と後宮(貴人・趙氏)に毒殺されたという説がある。
人物像で見ると、仁宗は孝心の厚かった王として伝わっており、継母に殺されそうになっても「そんなに嫌われるなら仕方がない。このまま焼け死のう…」とまで思ったほど、継母に従順だった。
一方、昭顕世子はドラマ同様に戦争にも出て、自身の主張もしっかり持っている人物。戦後に異母弟と共に清(中国)に人質にとられ、そこで清の進んだ文化に触れて人生観が変わる。そのために父王との仲は険悪になってしまう。そう考えるとD.O.が演じた世子の人物像は昭顕世子に近いかも。ちなみに昭顕世子の妻(愍懐嬪姜氏)も「100日の郎君様」でナム・ジヒョンが演じたホンシムのようにしっかり者で商才もあった。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
多くのドラマで仁宗を悲劇の世子としてい描いており、「オクニョ 運命の女(ひと)」では、ヒロインが仁宗の文定王后による毒殺疑惑を調べたりもしている。一方、「三銃士」ではイ・ジヌクが昭顕世子に扮して仲間と共に活躍する。主演はCNBLUEのジョン・ヨンファで、仲間に「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」のチョン・ヘインも出演している。
今回は第2話までの手掛かりで調べたが、後半になると“暗行御史”“戦争”というキーワードも出てくる。ネタバレになるので詳しい展開は伏せておくが、この2つについても検証してみた。
■その他の手掛かり:暗行御史
暗行御史とは日本のドラマ「水戸黄門」のように全国行脚をして秘密裏に地方官を監察する役職。暗行御史が史書に初めて現れるのは1555年で、高宗時代の1892年まで存在した。1555年というと、中宗の治世(1506-1544)より後になるが、実質的に最初の暗行御史は中宗の時代だったと見られているので、中宗・仁祖時代のいずれでも条件に合う。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」ではユン・ギュンサン扮するギルドンと仲間が暗行御史になりすまして地方の悪を成敗する。
■その他の手掛かり:戦争
朝鮮半島は常に異民族からの脅威にさらされていた。中宗時代には、南方は日本から北方は女真族から。だが、「100日の郎君様」で描かれる戦争は、明や女真族が関わる。朝鮮史を知る方なら仁祖の時代の2つの戦争(丁卯胡乱、丙子胡乱)を思い浮かべるのではないだろうか。当時、大陸(中国)は女真族が後金(後の清)という国を建てて勢力を拡大し、明は衰退の一途を辿っていた。15代王・光海君は両方とバランスを取った外交をしていたが、仁祖は「新明排金」政策を掲げたために2度も女真族から襲撃されて戦争をしている。
★韓国時代劇ではどう描かれる?★
「華政(ファジョン)」では朝鮮、明、女真族(清)との不安定な関係を描いている。
ちなみに光海君が世子時代(14代王・宣祖の治世)にも戦争があったが、こちらは日本(豊臣秀吉)が2度にわたって侵略に乗り出した侵略戦争。その時に活躍したのが、李舜臣(イ・スンシン)将軍。「不滅の李舜臣」では将軍の英雄伝を、「軍師リュ・ソンリョン~懲毖録<ジンビロク>」では将軍最期の戦いまでの7年間にわたった2つの戦争を人間ドラマを絡めて描いている。
■まとめ
以上から、「100日の郎君様」の舞台は11代王・中宗と16代王・仁祖の時代をミックスした舞台で、D.O.が演じた世子は架空の人物だが昭顕世子に近いと筆者は考える。
「100日の郎君様」は歴史を知らなくても楽しめるフュージョン時代劇として人気だが、本格時代劇ファンにも十分楽しめる秀作。個々人の目線で舞台背景やD.O.世子探しをしてみてはいかがだろうか?
◇NHK「100日の郎君様」番組サイト
2019.07.21スタート 毎・日21:00~22:00
◇Youtube「100日郎君様」予告動画
【作品詳細】【「100日の郎君様」を2倍楽しむ】