NHKBSプレミアムで日本初放送中の「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」（全22話）第19話で、ウォン太子役のパク・サンフンからクォン・ファウンにバトンタッチし、太子は高句麗第26代・嬰陽王に！実在した王と演じたクォン・ファウンを紹介しよう。
※以下、第19話までの一部ネタバレがあります。

「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」（달이 뜨는 강）は、三国時代の高句麗（コグリョ）を舞台に、国を守るために戦う王女と純朴な青年の真実の愛の物語。高句麗については【韓流コラム】高句麗第25代・平原王は本当に暴君だったのか？で詳しく解説している。また、ドラマ見どころや各話の詳しいあらすじと見どころ、豆知識などは【「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」を2倍楽しむ】でまとめている。



3月6日に放送した第18話で、かつて平原王の友でもあった桂婁部のコ・ウォンピョとその息子コ・ゴンが王権を狙って反乱を起こしたが失敗。13日放送の第19話途中で物語は4年後へと進み、クォン・ファウンが嬰陽王（ヨンヤンワン）として登場する。嬰陽王は実在した高句麗第26代王をモデルとしている。（【高句麗王系図】参照）

★俳優紹介：クォン・ファウン（1989年7月28日、180cm）
2015年、映画『延坪海戦（ヨンピョンヘジョン）』でデビュー。ドラマでは2013年「オーロラ姫」、2014年「美女の誕生」にも出演している。注目を集めたのは2019年日本の小説が原作の「医師ヨハン」で伝説の名医ホ・ジュンと同名のレジデント役。知的で端正なルックスのせいか、「SKYキャッスル～上流階級の妻たち～」や「マウス～ある殺人者の系譜～」でも医師（レジデント）を演じている。「夜を歩く士(ソンビ)」「六龍が飛ぶ」で時代劇も経験済。
「王女ピョンガン～」では終盤からの登場だが、強烈な眼差しと安定的な演技力でピョンガン王女と対立する嬰陽王を演じる。太子時代はすぐにいじける甘えん坊な一面もあった嬰陽王がなぜ、姉のピョンガンと対立姿勢を取るのか？第19話の放送で確かめよう。ちなみに姉ピョンガンを演じるキム・ソヒョンは1999年6月4日生まれでクォン・ファウンの方が10歳年上。

画像：KBS番組サイトより■嬰陽王（生没：不詳～618年）
嬰陽（ヨンヤン）王は、第25代・平原（ピョンウォン）王の長男で実名は高大元（고대원＝コ・デウォン）。即位後すぐに隋（581～618年）に「上開府儀同三司・遼東郡公・高句麗王」に冊封される。だが、いずれ隋との全面戦争を覚悟していた嬰陽王（在位590～618年）は、598年、隋の遼西に侵攻し、すぐに撤退。これは隋軍を高句麗国内に誘い込み、地の利を生かして戦おうとしたのだ。これが隋の初代皇帝・文帝の怒りを買い、隋による30万の大軍による第一次高句麗遠征を引き起こす。しかし長雨と疫病で撤退。嬰陽王は使節を送って謝罪したが、これは謝罪目的ではなく、使節による敵情視察の可能性が高い。百済の威徳王（在位554～598年）がこの機に乗じて高句麗攻めをしようと隋に頼むが断られる。これを知った嬰陽王は露骨に百済を圧迫し、百済は弱体化していく。嬰陽王は新羅へも侵攻し、新羅の真平王（在位579～632年）は隋に訴え、隋の煬帝（第2代皇帝）は高句麗に遠征する旨を正式に伝える。そして612年、613年、614年と高句麗は隋から計4回の侵攻を受ける。いずれも隋の攻撃を凌ぐが、さすがに第四次高句麗遠征で嬰陽王は煬帝に降伏する。しかし、降伏の条件の参内は実行していない。在位29年にして618年9月に死去した。
※以上、歴史書『三国史記』より。

ところで隋による第二次高句麗遠征の際、隋軍に偽りの降伏を申し入れ撤退を開始した隋軍に追い討ちをかけ大勝利を収めた将軍がいる。これが高句麗の大将軍、乙支文徳（ウルチムンドク）だ。ドラマ「淵蓋蘇文（ヨンゲソムン）」では名優イ・ジョンギルがこの役に扮した。

【ドラマの年表：三国時代】■史実とドラマの違い
第16話から継続登場している新羅の第24代・真興（チヌン）王だが、在位期間は540年～576年で、第19話の舞台となる590年の新羅は第26代・真平王の治世となって歴史とは異なっている。上の「■嬰陽王」の項でも説明した通り、嬰陽王の時代（6世紀末から7世紀初）は百済も新羅も高句麗からの圧迫を受けて隋に泣きついている。また7世紀初は高句麗が隋との戦いに備えている隙を狙った百済の武王から新羅は侵攻を受け続けた時期でもある。このあたりを描いたドラマが「花郎＜ファラン＞」や「薯童謠-ソドンヨ-」「善徳女王」、そして「淵蓋蘇文（ヨンゲソムン）」などだ。このあたりの高句麗、百済、新羅の3国の関係については「王女ピョンガン～」の最終回放送後に詳しく説明する。気になる方は【ドラマの年表：三国時代】をチェックされたい。

■キャスト
ピョンガン／ヨム・ガジン［カジン］：キム・ソヒョン（声：合田絵利）
オン・ダル［タル］：ナ・イヌ（声：三木眞一郎）
コ・ゴン［コン］：イ・ジフン（声：河西健吾）
へ・モヨン：チェ・ユファ（声：甲斐田裕子）
オン・ヒョプ：カン・ハヌル＜特別出演＞（声：阪口周平）
　ほか

◇NHK「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」番組サイト
　2021年10月31日 日曜21：00～22：00　日本初放送

【作品詳細】【「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」を2倍楽しむ】