【韓国歴史コラム】「青春ウォルダム」ドラマの時代は?世子のモデルは?7つのキーワードから検証

2023年07月22日20時00分ドラマ
画像出典:tvN公式サイトより ©tvN

「花郎<ファラン>」で新羅の実在した王を演じたパク・ヒョンシクが、「青春ウォルダム~運命を乗り越えて~」では朝鮮王朝の世子(王位継承者)を演じた。果たしてこの世子は実在したのか?ドラマで描かれる7つのキーワードから舞台となった時代と世子を探してみたい。
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パク・ヒョンシクが初めて時代劇に挑戦したのは「花郎<ファラン>」。時代設定や演じた役名から6世紀の新羅第24代・真興王」だと分かる。
【相関図】【メイン6人徹底紹介】【その他】



いっぽう「青春ウォルダム~運命を乗り越えて~」は朝鮮時代の架空の物語と謳われている。ではドラマに近い時代設定と主人公の世子イ・ファンのモデルを7つのキーワードから探ってみよう。
※検証のために一部ネタバレしていますが、最小限にとどめています。

★7つのキーワードから検証開始


①世子の名前“ファン”

⇒朝鮮王朝歴代国王27名の中で「李煥(イ・ファン)」と同じ漢字名の王はいないが、「ファン」の読みは3人いる。
第8代国王・睿宗(イェジョン)
第13代国王・明宗(ミョンジョン)
第24代国王・憲宗(ヒョンジョン)

※歴代王の名前は【表:朝鮮王朝歴代王様の名前、即位年など】でまとめている。

以降、この3人に絞って検証を進める。

②ファンの竹馬の友ハン・ソンオンのプロフィール(人物徹底紹介より)
ハン・ソンオンハン・ソンオン
「ハン家は朝鮮の基盤を築く時から共にしてきた名門家の子息で、父親は左議政ハン・ジュンオン」

・“朝鮮の基盤を築く時から”とわざわざ紹介しているのは建国に近い、朝鮮時代初期と考えていいだろう。
・“父親は左議政ハン・ジュンオン”とあるが、睿宗の時代に韓明澮(ハン・ミョンフェ)という権臣がいて、娘2人が、睿宗の妃(章順王后)、成宗の妃(恭恵王后)になっている。ドラマでもハン家の縁者が世子嬪候補になる。(実際に選ばれたかどうかはネタバレになるので伏せておく)

⇒3候補の中で条件に合うのは睿宗。


③星宿庁(ソンスクチョン)と巫女(ムニョ)
ドラマは「呪いの書」から始まるが、星宿庁と巫女がキーとなる。

星宿庁は、王室の安寧を祈る巫女たちが所属する官庁として高麗時代から実在した官庁。祈祷によって晴れや雨など願うのが仕事。所属する巫女は“国巫堂(クンムダン)”と呼ばれるエリート。ただし、儒教を国家理念とする朝鮮王朝においてはその存在を否定され続け、第11代国王・中宗時代には、完全に廃止となっている(「太陽を抱く月」豆知識より)。

⇒3候補の中で条件に合うのは睿宗。

「星宿庁」がキーとなるほかの韓国ドラマに「太陽を抱く月」第9代国王・成宗)や「ホン・チョンギ」第4代国王・世宗第7代国王・世祖あたり)などがある(但し「ホン・チョンギ」では「星主庁」としている)


④昭格署(ソギョクソ)
昭格署は、三清星辰(天上界)祭といった道教儀式などを担当する部署。“道教”とは儒教や仏教、民間信仰などの要素などを取り交ぜた自然発生的に生まれた宗教(「オクニョ」25話豆知識より)。

初代国王・太祖の時代に設立、世祖の時代に「昭格署」に。その後、11代・中宗の時代に一旦廃止され再設置、第14代国王・宣祖の時代に完全に廃止となる。

⇒再設置を考慮しても該当するのは睿宗か明宗。

昭格署が登場するドラマも「オクニョ」(第11代国王・中宗~第14代国王・明宗時代)、「太陽を抱く月」、「夜警日誌」(10代:燕山君時代)、「七日の王妃」など多い。


⑤ファンの兄、ウィヒョン世子が早世

死因は幽霊に取りつかれたファンによる呪死(噂)、または、食べ合わせの悪い食物(桃)による中毒死。

3候補の中で兄の死により世子になったのは睿宗と明宗。但し、候補の3人以外に、第21代王・英祖(ヨニン君)が前王である景宗を食べ合わせの悪い食持つ(柿)で暗殺したと噂されたが、その他の条件が合わないために除外。

・睿宗の場合
兄、ウィギョン世子(名前も似ている)が二十歳と若くして死亡し、睿宗は18歳で世子に冊封。ウィギョン世子の死は、乱を起こして王位を奪った父である第7代国王・世祖の祟りで呪死したという噂があった(【韓ドラコラム】参考)。ちなみに実在した睿宗も若くして死亡している。


・明宗の場合
明宗の兄も若くして死亡しているが、兄はすでに王位に就いた第12代国王・仁宗。しかも明宗が世子に冊封されたのは11歳の少年。パク・ヒョンシクが演じた若き世子には合わない。

⇒条件に合うのは睿宗。


⑦公用文は漢文
20話(最終回)で上訴文に記名する場面がある。そこでムジン法師(チョン・インギョム)が「本来は漢字で書くべき」という台詞がある。公用文にハングルを使うようになったのは19世紀になってからなので…。

⇒3候補全員が当てはまる。


世子イ・ファン世子イ・ファン

★結果



以上の検証から、①~⑦のキーワード全てに合致するのは睿宗だけ。つまり、「青春ウォルダム」は第7代国王・世祖の時代、世子は後の第8代国王・睿宗と考えられる。

また、世子の幽閉が解くために第12話である儒生が「世子の”睿徳”で儒生を導いて欲しい」と願うシーンがある。「睿徳(えいとく)」とは古代中国の言葉で、「賢明で高潔な徳を持つ」という意味。類義語に「明智(めいち)」、「聡明(そうめい)」、「賢明(けんめい)」などある中で、わざわざこの言葉をチョイスしたのは、「睿宗」を匂わせていると考えるのは、筆者だけだろうか?

※いかがでしたか?こうした時代や人物を歴史の中から探し出すのも、時代劇のだいご味。特に朝鮮王朝は資料も多いので、他のキーワードを洗い出してご自身の検証を進めてはいかがだろう?「韓流コーナー[歴史・豆知識]では、年表や系図、用語や実在人物の紹介などの図表や豆知識が多数用意しているので、参考にしてほしい。

【作品詳細】【「青春ウォルダム」を2倍楽しむ】
kandoratop

tvN公式YouTube予告動画(청춘월담 青春越壁、青春月譚)