「恋人」ナムグン・ミンとアン・ウンジンは、「風と共に去りぬ」レット・バトラーとスカーレットになれたのか?
2日、自己最高視聴率12.2%を記録してパート1の幕を閉じた韓国MBCドラマ「恋人」。韓国ではアツい熱気は今も冷めやらず、パート2を予想するうえで重要な『風と共に去りぬ』とどれだけ似ているのかと、話題になっている。YouTubeにて過去回のハイライト映像など公開中だ。
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「恋人」の脚本を担当したファン・ジニョン作家はインタビューで、「丙子胡乱(丙子の乱)、4.3事件、東学農民運動に関心が高かった。悲劇的な状況に投げ出された平凡な人々の話を書いてみたかった」とし「丙子胡乱の場合、厳しい敗北の歴史であるため簡単に手を出すことができなかったが、古典『風と共に去りぬ』からインスピレーションを受け苦難の歴史を少しは軽快に始めることができた」と『風と共に去りぬ』からモチーフを得たことを明らかにしていた。
マーガレット・ミッチェルの長編時代小説『風と共に去りぬ』は、アメリカ南北戦争下のジョージア州アトランタ市を背景に、炎のように激しく美しい女性スカーレット・オハラの激動の半生を壮大なスケールで描く。1939年にはビビアン・リーとクラーク・ゲーブルの共演で映画化された不朽の名作だ。
その物語は…
南北戦争直前の南部ジョージア州。大地主を父に持つ美しくも勝ち気な娘スカーレット・オハラは、思いを寄せる幼なじみアシュレーが彼のいとこのメラニーと婚約したことにいら立ちを募らせていた。そんな彼女の前に、素行の悪さを噂される男レット・バトラーが現れる。彼の不遜な態度に激しい憎しみを覚えるスカーレットだが、なぜか彼に惹きつけられていく。やがて南北戦争が勃発し、激動の時代の中でスカーレットの運命は大きく翻弄されていく。
既に「恋人」を視聴した方なら、「南北戦争」を「丙子の乱」に置き換えるとそのまま「恋人」にあてはまると気づくはず。
懐かしい銀幕の大スターたちが演じたメインキャストを演技の神と呼ばれるナムグン・ミンら演技派俳優たちが扮した。
イ・ジャンヒョン役:ナムグン・ミン
レット・バトラー役:クラーク・ゲーブル
ユ・ギルチェ役:アン・ウンジン
スカーレット・オハラ役:ビビアン・リー
ナム・ヨンジュン役:イ・ハクジュ
アシュレー役:レスリー・ハワード
キョン・ウネ役:イ・ダイン
メラニー役:オリビア・デ・ハビダンド
アン・ウンジンが演じた勝気で意地っ張りなギルチェはスカーレット・オハラそのもので、ナムグン・ミンの危険な匂いのするセクシーなイ・ジャンヒョンはレット・バトラーとそっくりだ。
また、スカーレットが「12本の樫の木屋敷」のバーベキューパーティーでアシュレーに想いを打ち明け、スカーレットに惹かれていることを認めながらもメラニーと結婚するとフラれたが、これは老夫婦の結婚式の日に納屋でギルチェが口づけで落とす作戦を決行し撃沈するシーンと似ている。スカーレットはこの後、癇癪を起し、その様子を偶然レット・バトラーが見ていて、生命力にあふれた彼女に強く惹かれるのだが、韓ドラでは「脈のないヨンジュンを諦めて、私のところに来ないか」とジャンヒョンの突然の告白で視聴者のハートをときめかせた。それに対してギルチェが返した返事が、バトラーのカッコよさになかなか気づかなかったスカーレットに通じる。その返事が気になる方は第2話ネタバレで。
スカーレットはフラれた腹いせにメラニーの弟チャールズ・ハミルトンに秋波を送り、自分に求婚をするように仕向けて結局結婚してしまうが、チャールズは戦死。ギルチェも長年自分に想いを寄せるスニャンの恋心を利用する。結婚こそしなかったが「戦争でヨンジュを守ってほしい」というギルチェの頼み通りに、スニャンはヨンジュを守って戦死してしまう(第3話で)。戦禍の中、ギルチェの父親が正気を失う第7話のエピソードまで同じだ。
他にも、ヨンジュが儒生たちの前で戦争の勝利を語る場面(第1話)で、「勝てると思うのか」とジャンヒョンが気勢削ぐが、これもバトラーが、南部が北部に必ず勝てると思うのかと皮肉る場面と通じる。
病弱だが心優しく純真、健気で全てを包み込むメラニーもウネのキャラクターにぴったり。スカーレットは産後間もないメラニーとその赤ん坊たちを戦火の中から脱出させたが、「恋人」ではウネの侍女が出産し、ギルチェ主導の下、ウネたちと力を合わせて赤ん坊を守る。もっとも気丈なふりをして生まれてくる赤ん坊を取り上げようとしたウネが、気を失うなど病弱なイメージもしっかり印象付けている(第4話)。バトラーがメラニーの人間性を高く評価しているように、皮肉屋のジャンヒョンもウネの前では素直だ。
戦後、スカーレットの2回目の結婚相手はフランク・ケネディ。妹の恋人だった人物だ。商店を営んでいたが商才のない男で、当時女性が男性を差し置いて主体的に経営を行うタブーを犯した。その後も製材所なども切り盛りする。ギルチェも一家の大黒柱として器の製造販売で商才を発揮する。戦争当時、命を救ってくれ、器つくりでも力をかしてくれた武官ク・ウォンム(チ・スンヒョン)から何度も求婚された末に結婚することに(9話)。
他にもジャンヒョンがギルチェにキスしておきながら、そのまま清に清(バトラーは戦争にいく)に行ってしまうあたりも同じで、『風と共に去りぬ』ファンなら他にも多くの共通点が見つけられるはず。
もちろん韓国ならでは展開もたくさんある。ギルチェの商才を、価値が落ちた小銭を買い集め、それを溶かして朝鮮古来の器“ユギ”で見せたり、丙子の乱で崔鳴吉と金尚憲に「交戦か、講和か」で論争させ、金尚憲が「降伏文書」を破る細かいディテールまで再現させるなど史実をうまく盛り込んだ展開など、さすがドラマ大国の韓国だ(実在の崔鳴吉と金尚憲を徹底紹介)。
そんなパート1のラスト10話で、朝鮮人の捕虜たちを狩る謎の女(イ・チョンア)が登場し、ヒロイン交代を匂わせる結末に、視聴者からは「還魂の二の舞か?」(「還魂」チョン・ソミン⇒パート2「還魂:光と影」コ・ユンジョンに交代)と懸念の声も聴かれたが、これについては、9/8・15の「恋人」特番案内記事でも紹介した通り、「スカーレットは2回の結婚の後、レット・バトラーと結婚している」だけにまずないだろうと筆者は考えている。くわえて8日の放送回はナムグン・ミンとアン・ウンジンのインタビューを中心にした内容だったので、まずその心配はないだろう。
「恋人」は、丙子の乱の兵火の最中に繰り広げられる恋人たちの物語と、苦しみの中で希望を見出す人々の物語を描く本格ヒューマン時代劇。【「恋人」を2倍楽しむ】では、ドラマの時代背景や実在人物、各話のネタバレあらすじと見どころ、豆知識など紹介してる。
「恋人」パート2は10月中に放送される。
◇MBCドラマページ(韓国)
◇YouTube「MBCdrama」
【作品詳細】【「恋人」を2倍楽しむ】